8 色々あった一日の終わり
そしてそれからは私の聖結界がうまく作用してくれたのか、魔物と遭遇する事は無かった。
そうして一応の平穏を手にしたまま、私達は夜を迎える。
「この調子なら普通に眠れそうだね」
「ええ。正直な話をすると、あのまま魔物に襲い続けられるような事があれば眠っている場合ではなくなってましたからね。到着予定も大幅に遅れますし」
クロードは安堵するようにそう言った後に言う。
「それもこれもお嬢のおかげです」
「いやいや、クロードがいなかったら聖結界を張るような時間も無かったから」
「いやいやお嬢の方が」
「いやいや、クロードの方が」
「……」
「……」
「これどっちも頑張ったって事で終わりにしますか」
「そうだね。なんか不毛な争いしてる感じするし」
まあ私はクロードの方が頑張ってると思うけどね。
色々と体張ってるのはクロードの方だし。
……まあそれはともかく。
無事に休めるのは本当に助かったと思う。
クロードは私が聖結界を張るまでの連戦で休息が必要だし。
……私も聖結界の維持で結構しんどい。
近い内にもう少し改良をした方が良いなと思った。
馬車周辺という狭い範囲にしか聖結界を張っていないのに、王都全体の聖結界を維持するよりも体力を持っていかれるのは、流石に費用対効果が釣り合っていない。
欠陥だらけの聖魔術だ。
クロードは凄いって言ってくれたけど……まだまだ改善の余地はある。
だけどそれはクロウフィールに着いてからにしようと思う。
元より疲労が顔に出ていないか。
クロードに心配を掛けていないかが心配で。
その状態で馬車を止め、持ってきたパンなどでお腹を満たしたところで……眠気が限界になってきた。
体が休息を求めているんだ。
だからそんな事に頭を回せる余力は無いし、目が覚めても聖結界の維持で体力は持っていかれるから、余力が無いのはきっと変わらない。
だから……改良するのはそれから。
クロウフィールに着いてから、聖結界を使わざるを得ないような事が起きるかは分からないけれど。
だからこの日はあの後クロードと少しだけ話をして、そのまま馬車で眠る事にした。
「もし聖結界の中に魔物が入ってきたら私が感知できるし、そうなったらちゃんと起きてクロードも起こすから。だからちゃんとクロードも寝ないとだめだよ」
眠る前に、少し釘を刺すようにそう言っておく。
なんとなくクロードは起きて見張りとかをしていそうな気がするから。
そんな事をしなくても大丈夫だって事を伝えて、ちゃんと休んで欲しかった。
「じゃあお言葉に甘えて俺も休ませて貰います。あ、ちゃんと何かあったら起こしてくださいよ。間違ってもお嬢一人で解決しようとか思わないように。些細な事でも必ずです」
「分かってるよ。私一人じゃ多分あまり何もできないし」
「結構色々できる事を知ってるから心配してるんですよ」
そしてそんな会話をしながらも、私の眠気は限界だったから。
「じゃあごめん。私ちょっと眠いから先に眠るね」
「はい。今日は本当に色々ありましたが……お疲れさまでした」
「クロードもね……明日からもよろしく」
「はい、こちらこそ」
最後にそんな会話をして、私は馬車の上で横になった。
お世辞にも寝心地が良いとは言えないけれど、そんな事が関係の無い程に眠かったから。
私の意識はそのまままどろみへと消えていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます