企画 置き場

羽柴

流れゆく時のまにまに

ルーチェ24歳。1度キャメルを出ていって帰ってきている設定です。

モブちゃん視点。急に始まり急に終わります。それでもよければ。




15の頃から働いているパン屋で小麦粉の発注を任されてしまった。メモを手にその買い出しに行って小麦粉が包まれるのを途中、普段見ない露店を見つけた。

宝石だとか、綺麗な布だとか、女の子が好きそうなものが所狭しと並んでいる。

この街では宝石を売るような店はそんなにない。

「わぁ…綺麗…。」

「お気に召したのでもあったか?」

物珍しく覗いていた所に急に店の奥から声が聞こえた。

「ひぇ…!?」

思わず後ずさりすると、奥から笑い声が聞こえてくる。

「はは、随分とビビりだな。」

声のした方に目を凝らすとこの辺では見かけない長身の男の人が布を綺麗に折り畳みながらこちらを見ていた。

「び、びっくりした…。」

「驚かせてごめんな。店に用があるなら誰か呼んでくるけど。」

そう言って彼は布を手に裏に引っ込もうとした。

「いえ、大丈夫です。見ていただけだから」

「そっか。まあ見るだけだったら俺でもいっか。」

その言葉に違和感を覚えた。

「あなたはここのお店の人?」

「んー…一応な。仕事柄店にはあんまり立てないけどな。」

「ふぅん…。ねえ、この宝石はなに?」

沢山ある装飾品の中からネックレスを一つを選んで男の人に尋ねると、

彼はうーん、とうなってこう告げた。

「わからん。」

「へ…?」

意外な答えに目を丸くしていると、彼は笑ってつづけた。

「この辺はちょっと知識ねえから。」

そんなことを言いながら、さっき私が指さしたネックレスを手に取り

指でくるくる回している。

「い、いいのそんなことして。」

「…お嬢ちゃんさ、装飾品好き?」

私の言葉に手を止めた彼は「にやっ」と笑って私の方を見た。

「う、うーん…人並みには好きかしら。」

「そっかー…じゃあこれやるよ。」

男の人はそう言ってずいっと手の中のネックレスを差し出してくる。

言葉の意味が分からずたじろいでいると

「早く、手出して。」

と半ばすごまれおずおずとその通りにすると、きれいな黄色の宝石が鎖と一緒に私の手の中に落ちてきた。

「う、受け取れません。」

「せっかく店の前で立ち止まってくれたんだから、これからもごひいきにってことで。俺、お嬢ちゃんみたいに一生懸命働く子好きだし。」

そうやってにこっと笑った彼にネックレスを突き返すと片手でグイっと押し返された。

私がそれすらも拒否しようとしたとき

「小麦粉1キロお待たせー。」

そんな声が聞こえて振り返ると、粉屋のおじさんが私を見て手を振っている。

「なあ、呼ばれてねえか。」`

「あっ、えっと。」

「じゃあまた来てくれよ。その時は素直に返してもらおっかなー。」

「……じゃあ、また、来ます。」

そう言ってその場を離れようとすると、不意に私の頭上に影が落ちて耳元で声がした。

「今度会ったときは小麦粉もまけてやろうか?『お嬢さん』。」

そんな言葉の後に離れた男の人の金の瞳が、私の何かを捕まえた気がした。




奥から出てきた紺の髪を持つ青年は

小麦粉を抱えて走り去る女性を目で追いながら、ため息をついた。

「新しく常連さん作るのはいいですけど、刺されないようにだけは気を付けてくださいね。」

「あれくらいで刺されたらお前なんか黒ひげ危機一髪みたいになんだろ。」

「なんです?それ。」

「この前本で読んだ中にあったおもちゃだな。」

「へー。」

「というか自分がモテてることに気づかねえとか、これだからイケメンは。」

「ルーチェサンと違って全部断ってますよ。」

「もったいなー。」


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24になって故郷に帰ってすぐのルーチェ。

割とやけになって少し火遊びしてもありかなと思う。

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