ヴァーチャル鶴の恩返し

工事帽

ヴァーチャル鶴の恩返し

 昔、昔を模した世界に、貧しいポリゴン数のおじいさんとおばあさんが住んでいました。


 ある日、たきぎをモデリングしていたおじいさんは、地面にめり込んでいる白いアバターを見つけました。


「あれは何だろう」


 おじいさんは白いアバターに近づきました。

 見ると鶴のアバターでした。

 おじいさんは、地面にアバターの半分をめり込ませたままの鶴を、かわいそうに思いました。


「おやおや、可哀想に。座標設定を直してあげよう」


 そうして鶴を助けてやると、鶴は空の上に吸い込まれていきました。


 家に帰ると、おじいさんは、おばあさんにこう言いました。


「さっき、座標がバグっていた鶴を助けてあげたよ」


 おじいさんとおばあさんが話をしていると、入口の戸を突き抜けて美しい娘さんが現れました。


「雪のような何かで道に迷ってしまいました。どうか一晩、ここに泊めてもらえないでしょうか」


 おじいさんとおばあさんは顔を見合わせ、こう言いました。


「「ログアウトしろよ」」

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