間に合わせで転移させられた異世界でできた仲間にネタ要員しかいないんだが~勇者な俺の職業がとても言えたもんじゃない~

なすりゃんぽん

プロローグ てんかい!

 転生と言う言葉を知っているだろうか。俺は知っている。まあ尋ねるぐらいだから知ってなきゃおかしいんだけど。


 一応知らない人のために簡単に説明しておこう。

 ラノベや漫画とかである『一回死んだら別の場所で生まれ変わりましたー!だからそっちで冒険してかわいい娘たちといちゃいちゃしまーす!』って奴だ。後半は嘘だけど。別の世界で生まれなおす、というものだ。


 これとよく一緒にされるものに「転移」というものがある。

 死んだか死んでいないかは知らないが、自身の姿形はそのままでほかの世界に移動するというものだ。



 さて、ここで俺の説明をさせてもらおう。


 生まれも育ちも日本の地方で普通の中流家庭。田んぼに囲まれて育った俺は、特に顔が良い訳ではなく、運動が凄いできるわけでもない。と言うかむしろできない。

 勉強だってそこでできる訳でもない。進学校の中でトップなんちゃらに入る実力があるわけでもないし……あ、校内でトップ200とかなら入ってるかな。まあ生徒数は120人くらいだけど。そもそも俺のところは進学校でもないけど。


 前置きはここまでだ。一言で言おう。


 俺は転移する(自称天使談)。


 本当に転移すると自称天使は言っているのだがあまり信じられない。自称天使が言っている、というのもおいおい話そう。

 ただ、自分は死んだはずなのにこうして自称天使と話しているのだから全部を信じていないわけではない。

 死因はいろいろありすぎてよくわからない。はっきりこれだ、って言うのはちょっと難しい。どれか一つでもなければ生きてただろうしな。


 まず一つめ。時計がずれているのに気づかずに目覚ましを早めにセットして学校に行ってしまったこと。やけに車が多いな、とは思ったさ。今考えたら会社に向かう人だったんだな。俺の登校は八時。このあたりの会社員は出社のために五時には車での移動を開始する。

 その時点までは良かったんだけどね。いや、良くないけどさ。睡眠時間が削られちゃったからな。って言うか窓の外の明るさで気づけよ、俺。なんか今日はやけに暗いな、曇りなのかな、傘を持っていこうかなとかのんきな事考えていた俺を殴りたい。


 そして二つめ。登校途中にめちゃくちゃ大切な忘れ物に気づいたところ。時間に余裕を持って出てきたとはいえいったん家に帰るなんて予想していなかった。


 三つ目。ゆっくり家に向かっても間に合ったかもしれないのに焦ってしまったこと。


 そして四つ目。焦ったせいで周りが見えていなくて、石に躓いてうっかり転んでしまったこと。


 そして五つ目。転んだ弾みに目の前の女の子を助けるような形でトラックにはねられてしまったこと。

 この女の子は運が良かったね、ホント。俺に感謝してその運を分けてくれよ。マジで。


 そして六つ目。俺の怪我は何とか助かるレベルだったのだが、その……医者がミスして。薬品の量をミスって。麻酔の量は少ないわ、逆になんか変な薬の量はめちゃくちゃ多いわ。

 手術中痛いっつーの!痛すぎて逆に気持ちよくなったわ!!

 まあそれで助かるわけがなく、あっけなく死んじゃいました。

 本当にね。運が悪かったなーって。

 ここまでが死因での運の悪いところ。


 さらにここからは死んでからの不運についてを話そう。


 俺はふわふわ、と魂的なものになってよくわからない所を漂っていた。ああ、死んだんだな、なんて考えながら。するとどこからか声が聞こえてきたんだ。


「やっばー。あの魂どこいっちゃったんだろ」


 澄んでいて、遠くまで響き渡るきれいな声が聞こえてきた。

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