Boren 伝説の始まり
観月蓮
第一章 誕生
一話 晴れ人
カンカンカンカン。
今日もこの物語の主人公オリジンと友達のクモは2人で稽古をしている。ちょうど、入学から30年目で80歳だ。これは人間でいう8歳ほどである。
オリジンは龍蛇人の同年代と同じような背だ。だが顔は特別で、また優しかっため皆から好かれている。クモの方はどちらかというと背が高い方で、少し自慢が多いが優秀な子であった。
--くそ~。全然思うようにいかない。どうやったら勝てるのかな。
そう思っているとクモが煽ってきた。
「オリジン、もっと本気出せよ。」
「これが本気だって」
と小さな声でオリジンは言った。
「そうか。じゃあ、これで終わりだ!」
そういうとクモは勢いをつけて、オリジンの顔に木刀を寸止めさせた。ビューと風が耳に響く。
「やっぱり、クモは強いな〜」
と感心げにオリジンは言った。
「まぁ、一応武術の成績357人中10位だからな」
自慢気にクモは言った。
「2人で強くなっていこうな。」
「そうだね。僕たちは未来の英雄だ〜!」
「また言ってるのかよ。それ」
クモは笑いながらそう言った。そこから2人は別れ、それぞれの家に帰っていった。
夕食を食べた後、オリジンは今日何があったかをモモに話している。これは日課だ。
「お母さん、そんなことが今日あったんだよ」
今日あったことをオリジンは楽しそうに話した。
「そうなのね。それは凄いわね」
モモは少しめんどくさそうに、また嬉しそうにそう言った。
「お母さん、僕の小さいときの話してくれない?」
「わかったわ。だけど、ちゃんと聞いてよ?」
「大丈夫だって」
そう言って、オリジンとモモは寝室に上がっていった。
「むか~し、むか~し。80年前からのお話。」
そういうとオリジンはとても幸せそうに聞き始めた。
ーーほんと、オリジンはこの話をすると幸せそうだわ。じゃあ、頑張らないとね。
「イト国の首都キョウに・・・」
イト国にある首都キョウの中地域西地区の建国通り二丁目1番地にトキとその配偶者、モモが住んでいる。夫婦はいつも「子供ができない」と友人に相談していた。だが100年前から相談をやめ、子供は諦めかけていた。どんなに努力しても全く恵まれなかったトキ夫婦は、赤ん坊を育てることになるなんて、この時は想像だにしなかった。
トキとモモは龍蛇人と呼ばれる種族で背はそれぞれ2メートル50センチ、2メートル30センチもある。また、諸説あるがもともと子供ができにくい種族であるためか、雌雄同体である。最後に、龍蛇に変身したり、自分の一部をものに加えることによって物の形を変形させられる種族である。
そんな龍蛇人のトキは近衛兵の隊長で、それ故に体は彫刻のようではないが確かに鍛え上げられていて、髪は白かった。モモの方も髪は白く、足がトキより1.5倍程もあった。子供のころモデルに憧れていたので、その足はとても役に立った。いつも二人は未来の子供のことばかり考えていた。勿論子供が生まれたら大変になるだろうが溺愛する予定だった。
こんな夫婦になぜ子供が出来ないのかと周りの人々は気になっていた。そう思われているのは、二人とも勘付いていた。少しやめて欲しいと思いながらも。
さて、2月17日の事だ。その前の日と違い青空が広がり、趣味で育てているアジサイは朝露をたたえていた。ただの気持ちの良い朝だと思っていた。モモは歌を口ずさみながら料理をしていた。トキは早起きが苦手で、しかも料理が下手だから御飯が出来たらいつも起こされている。この日もそうだった。そして、いつものように二人でご飯を食べ、いつものように準備を始めた。トキは近衛兵の服を着た。モモは少し露出度が高いお気に入りの服を着て、アジサイを見ながら本を読み始めた。
実は、寝ている時にモモが光に包まれていたのだが、トキは夢だと思ってモモに言うことはなかった。8時、トキは愛刀を変形させた指輪を通し、「いってきます」と言った。モモはそれに答えて「いってらっしゃい」といった。トキは少し笑みを浮かべながら仕事に向かった。それから少ししてモモは違和感を覚えた。
何故か家の周りだけが晴れていた。最初モモは驚きはしたが偶然だと思った。だが、一向にその風景は変わらなかった。明らかに異常であったが不思議なものは信じないモモは信じられなかった。これは、偶然なんだわ、きっと。そう言い聞かせながら、もう一度窓を見た。だが、やはり晴れていた。そんな夢を見ていた。そう思っていた。
トキはそういう変わったこともなく、いつものように王を守り、少し厳しめつもりで部下に稽古をつけた。だが優しいトキは、厳しい稽古をできた試しがなく、今日もそうだった。そうこうして、夕方になり部下に夜の警護を任せ、帰っている時だった。ふと空を見ると何故か家の周りだけ雲がないことに気づいた。勿論こんなことはすぐに噂になっていた。家に近づくにつれ、こちらを人々が不思議そうに見もしてきた。これはただことじゃないと、気持ちを落ち着かせ家についた。すぐにでもこのことを言おうとしたが夕食を食べてからにした。
「モモ、気づいたんだがこの家の周りだけ何故かずっと晴れてるみたいなんだ。何か知らないか」
「っえ、ほんとに?」
モモは、はっと驚いた。あれは、夢だと思い込んでいたからだ。
「帰り道で皆が噂をしていたのを見たんだ」
「そうなのね」
「それで思ったんだが、もしかしたら君がいるから晴れてるんじゃないかと」
「なんでそう思うのかしら」
「なんとなく」
モモが光に包まれていたから言ったのだが、流石にそれを言うのはやめた。
「そうなのね。まぁ偶然でしょ」
少し怖くなったのか、そういってモモは話を終わらせた。
「だよね」
その後煎茶を飲みながら他愛もない会話をして、二人は寝た。
「ご飯できたわよ~」
大きな声だった。ーーいつもうるさいと思っているがこれは仕方ない。
「はーい」
いつもは起きたらすぐリビングに向かうのだが今日は窓から外を見てみることにした。案の定晴れていた。
「おはよう」
リビングに行くとモモがいつものように言ってくれた。
「おはよう」
それから何日か経ちモモの周りは、いつも晴れているとトキは確信した。そんな日の夕食で思いもしなことをモモが言った。
「もしかしたら私の周りって本当にずっと晴れているのかしら」
「そうだと思う。君の周りはずっと晴れていたんだ」
「やっぱりそうなのね。もしかして精霊でも宿っているのかしら」
モモは冗談交じりに言ったが、トキには冗談に聞こえなかった。
「そうかもしれないね」
苦笑いをして話を終えた。
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