全てを失くした俺が唯一手に入れた異能『無かった事にする』がチートすぎて無双どころか無敵です

逢坂こひる

第1話 ザ・学級委員長

 その日は朝から雨だった。


 なんとなく気分が乗らなかったので学校をサボった。


 ——夕方になって雨がやんだので、飯でも買いに出かけようとしたら……。


「「あ」」


「……浅井あさいくん」


「委員長……なんで家に」


 玄関で学級委員長の藤林ふじばやし 美優みゆとエンカウントした。


「私ん、浅井くんと近所だから先生にプリントを渡すように頼まれたの」


 ザ・学級委員長の藤林。


 今時ビシッと二つに束ねたおさげに、ロイド眼鏡。まあ、スタイルは良さそうなのだが、校則通りの着こなしでそれを上手く活かせていない。


 磨けば光るタイプだ。


「ああ……どうも」


「浅井くん、元気そうね……ズル休みかしら?」


「ん……あーその」


 あからさまに疑いに眼差しを向けられている。


「オレ、体弱いんだよ! 雨に濡れるとすぐに風邪ひいちゃうから」


 我ながら苦しい言い訳だ。つか、藤林にズル休みだってバレたところで何の問題もない。つい、反射的に嘘をついてしまった。


「とりあえず、プリント渡しておくね」


 藤林がプリントを取り出そうとしたその刹那。


「バシャーン!」


 トラックのタイヤが水たまりの水を跳ね、オレも藤林もびしょ濡れになってしまった。


「……」


 無言の藤林。レンズが濡れていてよくわからないが、泣きそうになっているようにも見えた。


「ちょ……ちょっと待って」


 でも大丈夫。


 オレの異能『無かったことにする』を使えば何の問題もない。トラックの水跳ねを無かったことにして、そのあと藤林の記憶を無かったことにすればいい。


『藤林のトラックの水跳ねを無かったことにする』心の中でそう呟いた。


 これで、藤林はトラックの水跳ねがなくなり、元通りになる


 だが……。


 藤林は濡れたままだった。


 ……おかしい……異能が発動しなかったか?


 オレはもう1度、藤林に『無かったことにする』をこころみたが、何も変わらなかった。


「寒い……」


 藤林はブラ紐が透けて見えるぐらいガッツリ濡れていた。


「あ……そうだよな……とりあえず風呂でも入ってく?」


「うん」


 あれ……?


 今、苦し紛れに風呂入っていくって聞いたんだけど……藤林……『うん』って言ったよね?


「ごめん……浅井くん寒いの……急いでくれない?」


「あ……ああ、ごめん……とりあえず上がって」


 色々とを感じたが、とりあえず藤林を浴室まで案内した。


「着替え持ってくるから、先に入ってて」


 お湯……流さなくてよかった。


 出かける前に風呂に入ったのが幸いした。


 とは言え……なんで異能が発動しなかったんだろう。


 オレは念の為、自分に異能を使ってみた。


 藤林同様、ビショ濡れだったオレが濡れる前の状態に戻った。


 異能が使えなくなったわけではないようだ。


 どういうことだろう。


 何故、藤林に異能が効かなかったんだ?


 とりあえず、脱衣所に着替えを持っていった。


「浅井くん……そこにいるの」


「あ……ああ、着替え置いとくからな」


「待って」


 うん……オレは下着は盗んでないぞ……ちらっと見たけど。


「浅井くんも一緒に入らない? 濡れると風邪ひくんでしょ?」


 え……今なんて言った?


 一緒に入らないって聞こえたけど……。


「浅井くん……私なら大丈夫だから……」


 私なら大丈夫だから……って意味が分かんないんですけど!


 でもオレは咄嗟に『無かったことにするを、無かったことにする』を発動させ、ビショ濡れ状態に戻った。


 そして「本当に、いいのか?」白々しく聞いてみた。


「うん……」


 っしゃ! オレは小さくガッツポーズをした。


 オレの見立てでは藤林は絶対に可愛い。


 髪を下ろし、メガネをとった素顔を見れるだけでも熱いって言うのに……。


 全裸だ!


 まあ風呂だから当然なんだけど……藤林はきっとスタイルも抜群な筈だ。


 もうこれ以上欲望を抑えることが出来なかった。


「お邪魔します」


 ……結論から言うと。


 藤林はオレの想像を超えていた。


 神なんてオレの異能で無かったことにしてやろうと思っていたが……。


 オレは神に感謝した。


 

 ————————


 【あとがき】


 いきなり混浴!?


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