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夢の話

 夢の中でウサギを追った。草っ原を駆けて、転がる岩に足をかけそれを追った。森林でもない、林でもない、拓けた草の道で、脇には花が咲いていた。夢だと気付いていたし、自分は子供の姿だった。視点が低くなったし、半ズボンとソックスなんて子供っぽい服を着せられてるから。こんな服装になるのは何年振りだろうと思う。


 しろいウサギは、ぼくがちゃんと、ウサギのあとについていけてるか、後ろをふりかえりながら、ぴょこぴょこジャンプして走ってる。ぼくは夢中になって追いかけて、いつのまにか道のてっぺんについた。ちょうちょがヒラヒラ飛んで、道のお花のうえに止まった。


 ぼくはウサギがいなくなったと思って、キョロキョロしたら、すみっこにいたから、おいかけて一緒にジャンプしたつもりだったんだが、自分の体は真っ逆さまに崖の上から落下した。


 落下したのは自分だけで、そいつに突き落とされたんだとすぐに理解できた。

 それは自分によく似た顔だった。崖から伸びるように生えていた木の枝を掴もうと右腕を伸ばしたが、肘から下が無かったことを忘れていた。


 義手をどこに落としてきたのかわからないまま、激突するのと同時に、落下感で意識がこちら側に戻った。

 体が一瞬跳ねたことでそれがわかった。

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