第7話 名前(6) 霧崎汐音

霧崎きりさき汐音しおん


 霧崎きりさきじゅんの双子の妹です。

「氷上のシヴァ」全章を通してのキーパーソンであり、第二章で初めて存在を明かされ、また既に亡くなっていることが明かされます。

 第五章では、洵の心の中で今も生き続けており、洵と会話もしています。

 実は、洵の脳内で聞こえている汐音の声は全て、洵自身が作り出したものです。

 あれは、洵の潜在意識からの言葉なのです。

 洵が抑圧し、無視している自分の本当の気持ちを、汐音という装置が代弁しています。

「私はアニキの中にいるんだもん。アニキの知ってることは、何だって知ってるよ」(第五章19話)というのは、そういうことです。

「肝心な時に限ってこいつは黙る」(第五章17話)というのは、洵自身が答えを持ち合わせていないからです。


 ですが、あの中に一つだけ、本当に汐音本人による言葉があります。

 それが、洵のスマホの中に残されていた「銀盤」というメッセージです。

 どのように、というのは作者自身にも分かりませんが、あれだけは、本当に汐音が行ったことです。

 ということは、汐音という存在は完全には消えてはいないということになりますね。


 さて、汐音は前作「SILVER EDGE」では、二歳年下の妹、という設定でした。

 史上最年少で公式試合でトリプルアクセルを決めた天才少女。

 彼女が物語開始時点で既に亡くなっている、ということは前作においても変わりませんでした。

 「氷上のシヴァ」を書く時に、第五章を洵の物語にする際、洵の喪失をより色濃くするにはどうすればいいか、を考え、思い切って双子という設定にしました。

 これが結果的に「半身」のイメージとなり、物語が深くなりました。


 また、汐音は「氷の蝶」という、「氷上のシヴァ」の後に書いた短編小説の主人公にもなっています。

 「氷の蝶」は、当初シヴァの第六章として書かれたものですが、シヴァが小説すばる新人賞に落選したことを受け、改めて新作として書き上げたため、シヴァとは微妙に設定が異なる作品となっています。

 汐音と刀麻が野辺山合宿に参加したのが小学六年生(シヴァでは小五)、洸一の年齢が一つ下がっている(シヴァでは二つ上だったのが、年齢差が一つ縮まる)、彰が同い年になっている、など些末な違いですが。


「氷の蝶」のテーマは、おおまかに言えば、幼児的万能感からの卒業と、他者の獲得です。「他人はどこにいるのか」という問いが、作品を貫いています。

 主な舞台は、グランピア前橋(洵と汐音のホームリンク)と、埼玉アイスアリーナ(バッジテスト会場)、そして野辺山合宿(全国有望新人合宿)です。

 シヴァでもちらっと明かされていますが、汐音と刀麻は野辺山で出会っているのです。天才meets天才の物語ですね。

 

 今後、この作品の処遇についてはよく考えますが、とりあえず大幅改稿ということだけは間違いなさそうです。



 追記です。

 汐音の名前についての解説をすっかり忘れていました。

 洵、という名前の対になるものを、ということで、漢字をすごく慎重に考えた覚えがあります。

 洵と汐音。

 よーく眺めてみて下さい。

 洵という漢字をバラすと、汐音になる気がしませんか?

 あくまで部分的に、ですが。


 読みについては、そもそも「しおん」なのか「しおね」なのか、カクヨムで連載するまでは曖昧なままだった気がします……(そんなのアリか)



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