ねじまき小人

 給料日。日雇い魔術師でもフルタイムで働いていればそれなりの金額になる。余裕はないが、ない袖を振るのがオタクである。給料日前に注文だけして、給料日当日が支払い期限ギリギリなんて事もままある。家族に平謝りしてお金を借りる事もあるのでまずいとは思う。


 今月は小さな手のひらサイズのねじまき小人を買った。すでに部屋には買ったまま箱ごと積んである小人やゴーレムが多くそれは後ろめたいのだが、時が来るのを待ってそこにいると思うことにしている。おべべを揃えたり髪を整えるのを楽しみにしているが、いかんせん小人やゴーレムを動かすための魔力が補充出来ていない。それどころか先日、仕事に向かう道中で遅効持続性の毒を受けてしまうか何かして徐々に出来ない事が増えている。薬師アルケミーに診てもらわなければならない、という程重症でもないのでそのままにしているが、いよいよ枯渇してきた感がある。


 しかし出来ない事を理由に買うのを躊躇していてろくな事はない。興味を失うのはまだマシな方で、場合によっては召喚師と趣味嗜好が意外と合わないと感じてしまう事による粗探し、そして購入意欲の低下、関連商品や種族へのヘイトが溜まるなんていう事も、魔術師の間ではよくある事なのだ。特に昨今の、企業主体ではないディーラーの販売する生体を、人並外れた探知技術サーチをもって探す手間もない時代。たまたま電撃魔法サンダラの様にバチバチとした魅力を放つ生体見本を見つけたとして、それがいずれ別の後発のものに置き換わる事だって珍しくはない。再びその生体と出会いその時に買おうとしたところで、販売終了なんて事があれば目も当てられない。のだ。なので私は給料日当日である今日、賃金を受け取って5秒で振り込んだ。


 小人が来たら何を教えようか。それにこれまで育てた小人より少し細身のようなので、服の型紙から作らなくてはならない。小人自身の感情を抑制して着せ替え人形とするのも魅力的ではある。感情を持つ小人はその分魔力消費も激しく、時に呪物となりうるので、今の私には悪くはない選択肢だ。名前も決めなくては。あぁ……。

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