第33話 クスカの処置
「だぁああああ!」
ドカッ!!
カウンターを蹴飛ばす、冒険者ギルドマスターのトロイ。
「あいつは何者だあああああああ! クスカぁ! スヴィ、上に来てくれ、事情を聞く。他の職員は、負傷者の手当だ。はぁ、はぁ、はぁ」
「へ? は、はい……」
意気消沈のクスカ。
「はぁ、参ったねぇ」
困った顔のスヴィ。
冒険者ギルドマスターの執務室でトロイが吠える。
「クスカぁ! 何が原因であの状態になったぁあああああああああ!」
「ひぃ、ハ、ハルトさんが……、じょ、常設……依頼……の……モンスターの……魔石を……30個……ひぃ」
クスカはもう怖くて怯えて話にならない。
「何を言っとるか分からん!」
トロイは怒鳴り出す。
「トロイさん、落ち着いて、そんなに大声で叫んだら話も出来ないわよ。私が知ってる範囲で説明するわ」
スヴィはトロイを宥める。
「今日は森にモンスターが居なくなった為、依頼未達成の冒険者が多くてみんなカリカリしてたわ」
「何!」
「そんな時に常設依頼のモンスターの魔石30個を納品したハルト。クスカが驚いて大声で叫んだ事から冒険者達の注目を浴びていたわね」
「むむ、クスカぁ」
クスカを睨むトロイ。
「ひぃ」
怯えるクスカ。
「またハルトはマンティコアの魔石を受付に出して値段を聞いた。それもクスカが驚き大声で叫んだ為、Eランク冒険者のハルトがそれらを持ってる事を怪しんだ冒険者達が、ハルトを襲って返り討ちにあった」
「マンティコア! 森の
「最後にどうやら冒険者登録した時も、クスカがアイテムボックスがある事を大声で言った為、冒険者に絡まれたみたいよ」
「はぁ、クスカぁ、お前が大声でハルトの情報を周知したのが、争いの原因だって事は分かっとるな」
「は、はい」
「まあ、それが分かっとれば先ずは良いとして、確認したい事が沢山あるなぁ、まずハルトは冒険者登録を今日したのか?」
「はい」
「その申請書を持って来い」
「はい」
クスカは受付へ走って行った。
「スヴィ、ハルトをどう見る?」
「あの服装はギーベル軍の槍兵ね。但し持っていた槍は相当凄い業物だわ。あの従魔も気になるし」
「従魔? 飛んでた猫か」
「そう、あんなモンスターは、見た事も聞いた事も無いわ」
「ふむぅ、モンスターじゃ無いかも知れんな。モンスターに詳しい解体所のボーに聞いてみるか」
クスカがハルトの冒険者登録申請書を走って持って来た。
「はぁ、はぁ、冒険者登録申請書と従魔登録申請書を持って来ました」
「どれ、見せて見ろ」
トロイはクスカから申請書を受け取り確認すると、
「むむ、従魔の種別は不明か。クスカ、ボーを呼んでこい」
「は、はいぃ」
クスカは走って出て行く。
「スヴィ、森にモンスターが居なくなった件は分かるか?」
「さぁ? 私はダンジョンに入ってたから、森の状況は分からないわ。ただ、半数以上の冒険者が口を揃えて言ってたから、本当だと思う。後は空を飛ぶ虎を見たって言ってたわね」
それから少し後に、解体所のボーを連れてクスカが戻って来た。
「ハルトの従魔の事を聞きたいんだって?」
「ハルトを知ってるのか?」
「あんなに沢山の素材の買取を、お願いされたのは初めてだからねぇ」
「沢山の素材?」
「かなり高ランクのモンスターの素材もあったわ。ハルトは低くてもBランク相当、もしかしたらAランク以上かも知れないわね」
「成る程、マンティコアを討伐したって話も頷けるな」
「マ、マンティコア! 素材は何処にあるんだい?」
「ハ、ハルトさんが持ち帰ました」
「え? 何やってんのよぉ。サッサと買取するか、私のところに連れて来なさいよ。マンティコアの素材にどれ程の価値があるのか分かってる?」
「は、はひぃ」
「従魔の事が先だ」
トロイがボーに言う。
「従魔ねぇ……、恐らくあれは聖獣の窮奇ね」
「「「窮奇!」」」
「虎に猛禽類の翼が生えた、空を飛び風を操る聖獣よ。マンティコアも倒せるでしょうね」
「むむむ、何故そんな奴がEランクなんだ?」
「え? 初めて登録したらEランクです……よ……ね?」
トロイはクスカをジト目で見る
「世の中には冒険者じゃ無くても、強い人はいっぱいいる。そんな人が冒険者登録をしてEランクからスタートしたら、本人にとっても不幸だし、ギルドにとっても勿体ないから、テストにてランクを決める制度があるだろう」
「あっ、そんな制度がありましたね」
「はぁ、クスカぁ……、本当は首にするところだが、ギルドの教育も不十分だったかも知れん。見習いに戻して減給だ。反省しろよ。次に何かあったら首だぞ」
「は、はひぃ」
「しかし、ハルトの扱いは難しいな。実力があるから冒険者登録の取消は勿体ないし、取り敢えずテストは受けさせて、適正ランクに昇格させて、上級の依頼をこなして貰うか。ギルド内で暴れた事についても、何らかの罰を適用しないと示しがつかないしな、負傷者が多すぎる」
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