第23話 Cランク冒険者リステー

受付嬢のクスカは、あまりにも多い素材を受付カウンターの上に出されて、焦ってハルトに大声を出してしまったが、ハルトに注意されて何とか落ち着きを取り戻した。


「裏の解体所に直接持って行って欲しいので、一旦しまってください」


「はい。」


「アイテムボックスを持っていたんですね。」

と小声で聞いて来るクスカ。


「ノーコメントで」

と言いながらハルトは素材をゲイ・ボルグに収納した。


「あ! すいません。冒険者の秘密は追及しません」


「ところで、ダンジョン以外でモンスターが出る場所はありますか?」


「森にモンスターが出ますが、森の奥には強いモンスターも出現しますので、初心者はあまり奥に行かないでください」


「ありがとう。解体所はどこから行けば良いですか?」


「解体所は食堂横のドアから出ると近いですよ。」


クスカがドアを指差す。


「分かった」


キュウが受付のカウンターからハルトの肩に駆け上がると、ハルトは受付を離れて、解体所に出るドアに向かって歩いた。


「おい!ちょっと待て」

ハルトの肩を叩く男。


「はい。なんでしょう?」


黒い革鎧を着た体格が良い男。


「俺はCランク冒険者のキイキナ・リステーだ。リステーと呼んでくれ。お前、ダンジョンに行きたいんだってな、連れていってもいいぞ」


「俺はハルトだ。Eランク冒険者は、ダンジョンに入れないんじゃないのか?」


ハルトの言葉使いに一瞬顔を顰めるが、不敵な笑みを浮かべ会話を続けるリステー。


「くくく、ポーターとして雇って遣ろうと言うんだ」


「ポーター? 何だそれ?」


「荷物運びだよ。ハルトはアイテムボックスを持ってるだろう。さっき受付で見たよ、俺達が狩ったモンスターの素材を、アイテムボックスに入れて運んでくれればいい」


ラステーは受付でのクスカとハルトの遣り取りを見ていた。


あんなに多くの素材を収納出来るアイテムボックスがあれば、多くの素材を持ち帰る事が出来ると思っていた。


実際には全体の10分の1程度なのだが、アイテムボックスを持っていない冒険者にとっては大きな魅力だ。


ニヤニヤした笑顔から、その収納の内容を聞いて、モノによってはアイテム収納の物を、ダンジョン内で奪いたいのだ。


「断る」


ハルトはダンジョンに入ってモンスターを倒したいのだ。荷物を運ぶだけなんて何の魅力もない。


「ふん。そうか、後悔するなよ」


捨て台詞を残して去って行くリステー。ギルド内で騒ぎを起こすと不味いので、ここではあっさり引き下がる。


ハルトは解体所行く前に、通り道にあった依頼書が貼ってある掲示板の前で立ち止まる。


レベ上げが目的のハルトは、都市の何でも屋的な依頼や薬草採取等の依頼には目もくれず、モンスター討伐関連の依頼書を見る。


Eランクで受けられるモンスター討伐の依頼は無かったが、畑等の農作物を食い散らかす鼠や猪、青虫のモンスターは常設依頼として、誰でも受けられるし、特に依頼を受ける手続きをしなくても、討伐証明となる魔石を持っていけば、報酬を貰える事を確認した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちょっと前のドーマン達。


帝国軍を殲滅し王都に戻って来た。


のっぺらぼうが国王と入れ替わったのだが、勢い余って、貴族達を殺しまくってしまったドーマン達。


「ドーマン様、ちょっと不味いかもしれません。王都と王家の領地は、国王がドーマン様に王位を譲ったので問題は無いのですが、地方の貴族は身内を殺されたので納得してないようです」


白澤がドーマンに報告する。


「ふむ、帝国を追い払った戦力を見てもダメか?」


「実際に見てない者は納得出来ないでしょうね」


「良し、妖怪達にこの国の各領地を奪わせよう。白澤、人選は任せた」


「ははぁ」


「白澤様、儂も何処かに行きましょうか?」


ドンギュー将軍が白澤に尋ねる。

隙をみて逃げる気満々のドンギュー。


「ははは、お前じゃ無理だ、どうせ逃げようとでも思ってるのであろう」


「いえ、その様な事は……」


「どうせ、ドーマン様の式神が憑いてるから、逃げられんがな」


「え?」

固まるドンギュー。


この後、飛縁魔がハルトの村があった領地に派遣されたのであった。

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