邪悪な勇者と神槍の英雄～虐げられた普通の槍兵が成り上がり「ざまぁ」する～

第13話 キムラサ町

ハルトが通過した町キムラサ。

ツドイ帝国軍の魔道ゴーレムが城門を破壊し、ツドイ帝国軍兵士がキムラサも町の中に雪崩れ込んでいた。

泣き叫び逃げ惑う住民の女性や子供を切り刻み、領主の館に向けて進軍するツドイ帝国軍。

ギーベル軍の兵士達の矢も魔道ゴーレムの前では役に立たず、進軍は止まらない。

上空に浮かぶ人影２つ。

「この町まで来ていたか」

空中から町の様子を眺めるドーマン。

「儂が吹き飛ばそうかのう」

ドーマンの隣で宙に浮かび、羽団扇を手に持つ大天狗。

「ツドイ帝国に恐怖を教えよう。先ずは我に任せろ」

ドーマンは領主の館の屋根に降りて、百鬼夜行のスキルを使った。

「出でよ！　ダイダラボッチ！」

領主の館の広い庭から、黒い大男の顔が出て来た。

領主の館の門まで到達したツドイ帝国軍の兵士達は、黒い大巨人を見上げた。

「なんだぁ！　あの巨人は？」

「こっちに来るぞぉ！」

「ええい！　掛かれええええ！」

魔道ゴーレムが領主の館の門を破壊し、ダイダラボッチに近付く。

グシャッ！

魔道ゴーレムを踏み潰すダイダラボッチ。

「くっ、これでも喰らえ！」

オーク兵が持っていた槍を投げるが、ダイダラボッチの身体には刺さらず、跳ね返された。

「魔法だ！　魔法で攻撃し──」

グシャッ！

オーク兵は大声で叫ぶ途中でダイダラボッチに踏み潰された。

そして、ツドイ帝国軍の魔法も銃も、ダイダラボッチには効かず次々と踏み潰されていく。

「ぎゃあああああ！」

踏み潰されるツドイ帝国軍。

「ひぃ。」

「逃げろおおおお！」

ツドイ帝国軍は蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。

「はっはっはっは、組織だった撤退もまともに出来んのか？　大天狗！後は任せるぞ」

「承知した」

大天狗は烏天狗を召喚した。

烏の頭に山伏装束を着た無数の烏天狗が、猛禽類の翼を広げて空中から帝国軍を襲撃した。

ダイダラボッチから逃げ惑うオーク兵、コボルト兵達を、背中から手に持った槍で突き刺していく烏天狗達。

「助けてくれえええええ！」

「ひぇええええ！」

後方で状況を見ていた、オークキングであるツドイ帝国のトガス将軍は、ダイダラボッチと烏天狗達の強さをを見て、撤退を決めた。

「撤退だぁ！」

トガス将軍は騎乗していた、８本足のモンスターで軍馬であるスレイプニルの踵を返し、城門に向かう。

すると空中から行く手を遮る影が降りてきた。

山伏装束に身を包んだ偉丈夫、大天狗だ。

スレイプニルは大天狗の姿を見ると、立ち止まり後退る。

「何処に行く気だ逃げるなよ」

大天狗の低く野太い声が響く。

「くっ、見た事が無い奴だ、何者だ」

「ふっ、死にいく者に不要だ」

大天狗が羽団扇を振ると、雷がオークキングのトガス将軍を直撃した。

魔法耐性があり、一騎当千のトガス将軍と愛馬スレイプニルが一瞬で黒焦げになり、崩れ落ちる。

「将軍がぁああああああ！」

「ひ、ひぃ。」

将軍の周りにいた兵達も恐怖に駆られ逃げ出した。