第3話 百鬼夜行

ドーマンが放った2枚の式札は、式鬼しきに姿を変えた。式鬼は陰陽道で使役する鬼である。二体の式鬼が兵達の前に立ち塞がり、棍棒を振り上げると兵達の頭から叩き付けた。


「ぎゃああ!」

グチャッ!!


兵達は肉塊に変わる。


「ひぃ。そんな馬鹿な説明も聞かず、勇者の力が使えるとは……」

ヤマツ枢機卿は後退る。


「ちぃ、既に勇者の力を行使出来るのか!」

ドンギュー将軍は式鬼を見て焦った。


「ヤマツ枢機卿、やむを得ん。出現した変なオーガは殺し、召喚した勇者は半殺しにしてから隷属の腕輪は嵌めるぞ」


将軍ドンギューは周りを取り囲んだ兵達に命令した。


「構え!」


兵達は一斉に銃を構える。


不穏な空気を察し、ドーマンは百鬼夜行のスキルを試しに発動した。


「ふむ。百鬼夜行召喚、出でよ!後ろ神!土蜘蛛!おとろし!」


特に詠唱や宣言も必要が無いのだが、確かめる様にドーマンは妖怪達を呼んだ。そして、念話で指示を出す。


すると、銃を構えた兵達の髪が急に後ろに引っ張られた。


「んぐっ!」


ダダダダダンッ!!!


兵達の体勢が崩れ、天井に銃弾は発射された。


兵達が横目で後ろを見るが誰もいない。


「な、何かが俺の髪を引っ張ってる」

「おいおい、何なんだよぉ」


しかし髪は後ろに強く引っ張られてるのだ。


姿が見えず後ろから髪を引いているのは、妖怪後ろ神だ。


同時に兵達と同数の土蜘蛛が、ドーマンの周りに出現した魔方陣から湧き出た。


土蜘蛛は全長120cmで、巨大な足が長い蜘蛛。


カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ、カサカサ……


土蜘蛛は尻から糸を出し、兵達を拘束して、脚を兵隊に突き刺すと・・・、兵達を生きたまま喰らい始めた。


ガリガリ、ガキン!

グチュグチュゥ……


「ひぃ。助けてええええ!」

「ぎゃあああああ!」

「や、止めろおおおおお!」


魔方陣の四隅にいた修道服の4人の男の元にも土蜘蛛が歩み寄る。


4人は逃げようとするが、土蜘蛛の方が速く、4人もあっという間に土蜘蛛に捕らえられていた。


「ひぃ」

「た、助けてぇ」


抗うことが出来ず、土蜘蛛の糸に拘束される4人の男達。


「そいつらは、まだ・・喰うな」

ドーマンの言葉に無言で従う土蜘蛛。


ドスン!


土蜘蛛が兵達現れたと同時に、ヤマツ枢機卿とドンギュー将軍の直ぐ後ろに、大きな何かが落ちてきた。


振り返る2人。


そこには髪が長い巨大な顔だけの妖怪おとろしがいた。


「なっ、なんだ!」

「ひぇ。か、顔がぁ……」


ドンギュー将軍は咄嗟に腰の剣に手を伸ばしたが……。


シュルシュルシュルシュルシュル。


おとろしの長い髪が2人を、素早く雁字搦めに拘束した。


「無礼者ぉ!放せぇ!」

ドンギュー将軍は暴れるが、おとろしの髪はビクともしない、寧ろ更に締め付ける。


「ふぐっ、ぐぬぬぬ」

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