サイキック×コンプレックス
紅瀬流々
第1話「プロローグ」
装甲車が地面に突き刺さっていた。
運転席側から土に埋もれ、炎と煙が空へと舞い上がっている。夜の闇に浮かぶその姿は、まるで巨大な蝋燭だ。
白髪の少年は薄く嗤い、その横を通り過ぎる。
年の頃は七歳くらい。
だがその表情に子供らしさなどなく、害虫でも見るような冷たい視線で、目の前を走る軍服姿の兵士を見ていた。
兵士の男が情けない悲鳴を上げながら、腰を抜かして転倒する。泥に塗れながら必死に這いずり、白髪の少年から逃げようとしていた。
しかし――
突然、兵士の男の体が宙に浮かび上がる。
見えない巨人の手で引っ張り上げられたように、暗黒の空に磔にされた。
涙声混じりの悲鳴を上げ続ける男に向かって、白髪の少年は冷ややかに言い放つ。
「死ね」
男の頭部が破裂した。内部で爆弾が爆ぜたように、散り散りに。脳漿と鮮血を周囲に撒き散らす。
首の無くなった男の死体が、ボトリと地面に落下した。
白髪の少年は満足げな笑みを浮かべた。
「……ぜんぶ、きみがやったの?」
白髪の少年の後ろに、彼と同い年くらいの黒髪の少年が立っていた。
黒髪の少年は悲しげな表情で周囲を見渡す。
炎と煙の中に、無数の死体が転がっていた。首の無い死体、体中の骨が折れ曲がった死体、全身黒焦げの死体……
「うん。ぜんぶ、ぼくが殺した」
白髪の少年が事も無げに答える。
「そう……」
黒髪の少年が項垂れる。沈痛そうな面持ちで。
赤々とした炎に照らされ、二つの小さな影が揺らめいていた。
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