異世界転生、英雄への軌跡

かのん

第1話 飛行機事故

西暦2019年5月18日


「みなさん、落ち着いて下さい!」

「席に座って、頭を下げて下さい!」


機内の明かりは消え、揺れは物凄く、立っていられない程だ。機体自体真っ直ぐに飛んでいないのが分かる。高度が物凄い勢いで落ちているのか、自分の体を包み込む浮遊感が物凄い。今この時は重力の楔から解き放たれた様だ。


周りは阿鼻叫喚だ、、何が起きているか分からない。昔読んだネット記事に、飛行機事故なんて、0.0009%しか無いって書いてあったのに、何で俺がこんな目に遭ってるんだよ。。


~2日前~


西暦2019年5月16日


「部長!今なんておっしゃいました?」

「すまないが、明後日からアメリカに飛んで欲しい。」


「勘弁して下さいよ。明後日なんて急過ぎやしませんか!色々予定もあるんですよ」


「すまないと思っているが、ロスの案件で先日大きなクレームが起きただろう。会社よりも人を派遣せねばならなくなってな、君を担当の1人として、選ばさせて貰った」


「理解してくれ、その代わりビジネスクラスを用意したから、、」


「いやいや、そんな物で靡きませんよ!」


「よりによって、その日は俺の誕生日なんですよ、、」


「すまんとは思っている。1週間ほどで帰ってこれるハズだから、、、」



~西暦2019年5月18日太平洋上空~



「メーデー、メーデー、メーデー、こちら成田発ロサンゼルス行き、TZZ176便、管制塔聞こえるか。こちらTZZ176便」


「管制塔聞こえるか!こちらTZZ176便、突如大きな揺れを感知。目の前にオーロラの様な光と目の前に大きな山が急に現れた。メーデー、メーデー、メーデー」


「機体制御不能、エンジンから出火、全計器が異常値だ。このままでは山にぶつかり墜落する!誰か、くそったれの夢の中だと言ってくれ!」


「メーデー、メーデー、メーデー!!」


「一体どうなっているんだ。無線は不通、原因不明のエンジントラブルに計器の故障、目の前のオーロラはなんだ?目の前に現れた山は一体なんなんだ、誰か説明してくれ!!!!此処は太平洋のど真ん中だぞ!!」


「機長!!」


「なんだ!!!」


「このままでは墜落します。このスピードでは、、機体は保ちません!」


「そんな事は分かっている!無線で呼び続けろ!」


「このままだと、山にぶつかりお陀仏だ。何とか避けて、あの不気味な大地に不時着するしかない。」


「もしもの時に備えて、乗客に状況を説明しろ。ただし余計なことは言うなよ。不時着を試みる事だけを伝えろ。いいな。」


~ 西暦2019年5月18日TZZ176便機内~



「みなさん落ち着いて下さい!」

「席に座って、頭を下げて下さい!」


「機長より、ご搭乗の皆様へ、当機は、原因不明のエンジントラブルにより、これより不時着を試みます。とても大きな振動が予想されます。どうか諦めずに安全ベルトを締めて、身を屈めて下さい。」


アナウンスは周りの叫び声で掻き消されている。ある人は泣き叫び、家族連れだろうか、抱き合って震えている人達もいる。


心臓がバクバクと鳴っているのを感じる。頭が真っ白だ、考えが纏まらない。携帯の電波も通じない、たまらなく家族の声が聞きたい。


速度が速すぎてハッキリ見えないが、窓の外と機体の中で時間が異なるか、、と錯覚するくらいに目まぐるしく風景が過ぎ去っていく。


直感で分かる。不時着と言っているが、多分墜落する。助かる可能性なんてかなり低いだろう。


「母さん、、、先に逝くかもしれないけど、どうか元気で。。。」


そして、物凄い衝撃と爆音を最後に意識が遠のいていった。




飛行機と思われる残骸は黒く焼け焦げており、その原型を留めていなかった。夜通し炎は燃え続け、黒煙は空高くあがり、遠く離れた王都からも見える程であった。


「公爵様!アスター様!」


「此処に生き残りがおります、全身酷い怪我ですが、生きております!」


「よし、先ずは手当だ!聖魔法で応急処置を施し、屋敷に運べ!他の生存者はどうだ!?」


(なんだ、一体何なんだ、さっきまで死んだ爺ちゃんが手を振ってこっち来いって言ってくれてたのに。暖かな光が差し込んで来る。とても、心地が良い)


「○△□△☆○□」


(何かよく分からない言葉も聞こえる。

多分夢なんだな、飛行機事故も妙にリアルだったけど、夢だったんだな、きっと。)



(あれ、ここは、、、)


全身の気だるさに嫌気を覚えながら、朝日の眩しさを感じて、目を覚ました。

体が動かない。


(知らない天井だ)


そこでふと隣に金髪の女の子が此方を覗き込んでいる事に気付く。多分まだ小学生になったか、なってないか位の幼い子だ。将来は物凄い美人になるのでは?と思う位に整った顔立ちをしている。


「○△□△☆○□」


突然声を掛けられた、何を言っているか分からない。英語でもフランス語でもない、、何語だ、これは?


(とにかく此方も何か話さないわけにはいかない)


(先ずは挨拶とお礼からだな、人間礼を尽くせば、言葉が通じなくても伝わるものだ)


(よし、とりあえず日本語で良いか)


「あうー」


(ん??あう?)


「あう、あう、あー?」


(何?言葉が出てこない、、)

(どうなっているんだ??)


恐る恐る目線を動かし、自分の体をよく観察してみる。手は短くぷにぷにと柔らかそうだ。足も短いな、、


(赤ん坊の体ではないのか?これ?)


(嘘だろ?まだ夢でも見てるのか?)


訳が分からなくなり、混乱している気持ちを抑え切れなくなった俺は、まずはこのどうにも出来ない感情の発露を求め、叫んでみることにした。


「ビェェェェン!!!」


(どうなっているんだーーーー!!!)

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