氷壁を砕く為に 〜俺と中学生姉妹が一緒に暮らす事になりました〜

アキノリ@pokkey11.1

第1章 幸せな世界からの転落

1、姉さんと俺と母親と.....その後

俺、中島風月(ナカジマカズキ)。

年としては19歳。

家から自転車で15分程度で通っている県立大学の二年生だ。


そして.....黒の短髪に黒縁の眼鏡。

更に.....身長175センチと低めのステータス。

陰キャでは無いが.....あまり陽気でも無い。

暗い性格でも無いが明るい性格でも無い様な人間だ。


そんな俺は高校3年生まで姉さんの中島柚木(ナカジマユズキ)と母親の中島香織(ナカジマカオリ)に母子家庭で育てられた。

簡単に言っちまうと親父と離婚した母親、それと.....既に高校生だった俺の姉さんの貴重なバイト代で育てられたのだ。

つまり姉さんと母さんが俺の居なくてはいけない存在だった。

中学生のクソガキがどうこう出来る問題じゃ無かった為に高3まで動けなかったので有る。


そんな中でもそこそこ幸せな3人だったのだが。

それから4年ぐらい経った時。

母親が健康診断でステージ4の大腸癌と診断されてそのまま半年後に亡くなった。


それで.....俺と姉さんだけが残された。

大学には通わずに働くつもりで動いていたのだが。

姉さんはそれをさせてはくれなかった。

そんなこんなで忙しい中。


それも有るが母親が亡くなってから何か亀裂が走ったんだと思う。

しかも途中で姉さんは俺の養育の為に結婚すると話した。

それで.....亀裂が広がってしまったのだ。


結婚。

それだけで衝撃だったが.....更に相手はバツイチで。

双子の妹の子持ちだった。


その為俺は.....眉を顰めて家を後にしたのだ。

実家を捨てる気で、だ。

赤の他人と交わるのもごめんだったし.....と思いながら、だ。

嫌気が差していた。


だけど.....連帯保証人も無しに一人暮らしなんか出来る訳が無いと思っていたのだが姉さんが部屋を用意していた。

最後まで迷惑を掛けていたのだ。


それで何とか一人暮らしが始められ、大学にも何とか通えたのだ。

充実した日々を過ごしていて実家にはもう帰れないと思いながらも.....帰った方が良いのか?などと複雑な心境の日々を過ごし。

そうして2年の歳月が経過してしまっていた。

勉強も忙しくて、だ。


「.....懐かしいな」


3月の春休み。

部屋を教科書が新しくなるのとかも有り片付けの為に整理していると.....姉さんと母親と一緒に写った写真が出て来て俺は目をパチクリしながら見ていた。

こういう事も有ったなと思い耽る。


「.....姉さん.....元気かな」


でも一度でも実家とは決別した事は事実。

もう戻れないだろう。

だけど.....姉さんの事を突然に思い出してしまった。

俺は首を振りながら.....教科書などを手際良く整理していく。

そうしているとインターフォンが鳴った。


ピンポーン


「.....宅配便か?」


思って、ドアを覗く。

そこには.....姉さんが立っていた。

俺は驚愕しながらドアを開ける。

するとヤッホーと手を振って姉さんが入って来た。


「どうしたんだ.....その.....2年ぶり.....」


「うんうん。元気かなって思って」


「.....」


「.....やっぱりまだ色々と根に持ってる?」


俺はその言葉に視線を逸らした。

何も言えない。

黒髪、そして.....肩まで伸びた髪。

それから俺に柔和な顔を見せる、美人。

顔立ちも整い、スタイルも良くその顔もスタイルも2年立った今でも変わらない。

だけど.....俺は複雑な心中だった。


「でも.....偉かったね。2年も.....よく頑張ったね。私が居なかったのに.....」


「.....止めてくれ。俺はもう子供じゃ無いんだから」


「.....そっか。だよね。それにしても格好も良くなったね」


俺に優しげに笑みを浮かべる、姉さん。

そんな姉さんには眉を顰めながら.....視線を向けれなかった。

ガキかって感じだけど、でも.....向けれなかったのだ。

すると姉さんは俺の部屋にズカズカと入って来た。

俺は、お、おい.....、と静止するが。


「綺麗な部屋.....だね。エロ本とか無いのかな」


「.....姉さん。何を言ってんだ。置いてない」


「あはは。だって思春期の男の子の部屋って基本的にそういうの置いてあるじゃ無い.....」


そこまで言い掛けて俺の部屋の中央に有る、色々な昔の写真を見て.....膝を曲げた。

それから.....写真を見る姉さん。

俺は.....それを見ながら.....溜息を吐く。

姉さんに写真を見られてしまった。


「大切にしてくれているんだね」


「.....別に。1年ぶりぐらいに見たんだが」


「.....でも風月は.....写真は捨ててないよね。こんなにアルバムにセットして。じゃあ大切にしてくれているって事だ。有難う」


俺に笑顔を見せる姉さん。

その顔に.....再び目を背ける。

そして言葉を発した。


「.....って言うか.....それはそうといきなり何をしに来たんだよ」


「あ、そうそう。風月、今春休みじゃない?それで実家に帰って来て欲しく.....」


そんな言葉の途中で再び俺は眉を顰めて言う。

姉さんを見ながら、で有る。

何を言っているんだ?


「.....冗談だろ。俺はあの家を捨てたんだぞ。帰って来いなんて.....」


「駄目かな?お願いが有るんだけど」


「.....」


「.....私と武さんが用事でちょっと出てくるの。それで.....3日ほど叶、希。その二人の様子を見ててくれないかなって」


また盛大に溜息が出た。

何を言っているんだ.....。

思春期真っ盛りの女の子を見れと?

そんなの無理に決まっている。


「.....もし断るって言ったら?」


「.....強制はしないけど.....。あはは」


「.....でも姉さんは俺が来る様に何とかするんだろ」


「.....そうだよ。それが大体、姉貴ってもんでしょ?」


俺は頭に手を添えそして息を吐く。

それから姉さんを見る。

姉さんは.....相変わらずな感じだ。

多分断っても.....また来るだろうしな.....この場所に。

俺は.....姉さんを見る。


「じゃあ3日間だけ.....分かった」


「.....有難う。.....本当に成長したね。風月」


「.....」


にしし、と笑顔の姉さん。

まあ.....何時迄もクソガキのままでは居られないからな。

駄々を捏ねる様な、だ。

だから.....行ってもいいんじゃないかと思った。

それに姉さんに最後までお世話になったのは事実だしな.....。


だがこの3日過ぎても.....姉さんと武さん。

つまり姉さんと再婚相手の人が.....帰って来なかった。

そんな事が有るとは.....思って無かったが.....。

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