さらば、全てのサンクコスト。現代社会の生存戦略。
きっと何物にもなれないお前たちに告げる。
精神的なサンクコストを感じるのをもうやめようというお話。
サンクコスト(埋没費用)とはその名の通り回収出来ずに埋もれてしまう費用のことである。
現在、楽天モバイルが大赤字をだしながら携帯事業に投資を続けているが、もし楽天が今この事業から撤退すると、これまでかけてきたコストが一切無駄になる(埋没してしまう)というものだ。
そしてサンクコストが発生することを恐れて止めるに止めれない心理をコンコルド効果という。これはコンコルドを開発するときに莫大な資金を投下しすぎて止めれなくなったことが由来らしい。
結局、コンコルドは採算ラインにも乗らず、就航から1年と経たずに製造中止になったのだから皮肉にもなりはしない。
もっと分かりやすく身近なもので言えばソシャゲガチャないしギャンブルだ。
3万円突っ込んでも当たらず、もう少ししたら当たるかもしれない。ここでやめたら3万が無駄になってしまうという心理から課金を続け、結果的に5万突っ込んでも当たらなかったなんてのは、あるあるもあるあるだろう。
損をしたくないという心理から結果的に損が膨らむのだから人の業というものはあまりにも深い。
現状維持バイアスしかり、プロスペクト理論しかり、
とにかく人間というものは損をしたくない(リスクを避けようとする)生き物である。
これは人類という種が厳しい自然環境の中で生き残っていくために身につけた必要な心理=本能とも言えるものだろう。
だが、幸いなことに我々はいま、今日生きるか死ぬかの人生を歩んではいない。人類は進化し、暮らしは豊かになり衣食住事足りて、我々が抱える悩みはもっと高次なものに変わった。
生命の危機のない安定した環境の中、経済活動を行ううえで期待値(あるいはそれ以上)のリターンを求めるには足を引っ張ってしまう心理になってしまったのだ。
さて、少し話がずれてしまったが、ビジネスにおいてサンクコストが発生することは避けられないし、行動経済学を多少なりとも理解したうえで判断をすることは大事だろう。
僕が今回言いたいのは、もっとミクロで個人的、そして精神的な話だ。
自分でコントロールできないものに対してコストを投下し、ときにはコンコルド効果によりさらにコストを投下した結果、思うようなリターンを得られずにネガティブな感情を抱くのはやめようではないか。
誰か(あるいは何か)のためにしてあげたという心理は非常に危ういものである。裏を返せば、そこには無意識的にリターンを求めているからだ。
そして、自分でコントロールできないものは必ずしもリターンを返してくれるとは限らない。その時、「してあげた」という心理は「してやったのに」と変化し、リターンを得られないことに対し怒りや憎しみ、悲しみといった感情を抱える可能性が高いからだ。
会社のために昼夜を問わずプライベートを犠牲にして働いた結果、正当な評価を得られなければ、「オレはこんなに会社のために尽くしたのに」と失望を覚えるだろう。
好きな異性を落とすためにデートしプレゼントをあげたあげく振られてしまったとき、「こんなに時間とお金を使ったのに」と怒りを覚える者もいるだろう。
人間が抱える不満のほとんどは、こうなったらいいとか、こうあればいいという期待に対し、マイナスのギャップが生じることで起こることがほとんどだ。
そうやって芽生えた負の感情はどこにも行けず、ただ自分自身を苦しめるだけなのだ。
では、どうするべきなのか。
個人的にこれはもう、捉え方を変えるしかないというのが僕なりの結論だ。フレーミング効果というやつである。
自分でコントロールできるのもの、つまり自分自身にコストを投下したのだと、物事を捉える枠を変更(リフレーミング)するのだ。
先ほどの例でいえば、会社のためではなく仕事を通じて自分のスキルアップにコストを投じた。好きな相手を落とすためではなく自分の魅力を磨くためにお金を使った。と主体を他の誰かではなく自分自身(コントロールできるもの)に置き換えるのだ。
そうすれば多少なりとも自身の成長というリターンを得た気になれるし、少しは気持ちもマシになるんじゃないだろうか。
よく、「筋肉は裏切らない」というがこれが最も分かりやすい例だろう。
筋トレというコストは必ず筋肉という目に見えるリターンとなって自分に返ってくる。
自分でコントロールできるものにコストを投下するメリットは実はもうみんな気付いているのだ。
きっと何物にもなれない僕にとって、これが今を生きて行く生存戦略である。
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