イレカワリ〜キミを絶対守り抜く!〜

サカキヤヨイ

1歳

第1話 入れ替わっちゃった!

 朝だ。

 ああ、また朝が来たのか……。

 昨夜もほとんど眠れなかった。

 一年前に生まれた長男ソラタは、最近めっきり夜泣きが激しくなってきた。こういうのは人それぞれらしいけど、生まれたての頃の方が熟睡できた気がする……。

 夜の8時に布団に入って、ぐずぐずと10時くらいまでかかって寝かしつけて、ようやく寝たかな、と一息つくが、日付が変わる頃に泣き声で起こされる。それをあやしてなだめて寝かしつけるのに一時間半。ほっとしたのも束の間、草木も眠る午前二時、再びふえぇ、ふえぇ、と始まる。それをまたあやしてなだめて……としていると、気の早いカラスが鳴き始め、初夏の空がしらじらと明けてきて……ああ、またほとんど眠れないまま今日が始まってしまう、と、げんなりとした気分で朝を迎えるのだ。

 そこからまた少しまどろんだらしい。日はそこそこ高く登っている。今日も暑くなりそうだ。

 ソラタはまだ眠っているのか、静かだ。このすきに軽く掃除をして朝食の準備をして、天気がいいから洗濯機も回したい。しかし私が起き上がった瞬間、その気配を鋭敏に察知して、敵は目覚めるのだ。毎朝これで失敗する。朝の家事なんてソラタが生まれてから満足にできた試しがない。

 ああ、起きたくない。どうせ慌てて起きたところで、せっかく寝たソラタを起こしてしまうだけ。だったらいっそソラタが目覚めるまで眠っていようか……いやでもマンションのベランダに太陽が差すのは午前中だけ……そのうちに洗濯物を干したい……ああダメだ、身体が重くて重くて、起き上がれない。

 ……ん?

 あれ。ほんとに起き上がれない。何これ?

 と、つい独り言を発した途端。

「んにゃーっ!」

 赤子の声が部屋いっぱいに響く。

 あ、やばい、ソラタが起きた。

 あれ?でも……あれ?なんか変。

 だって。

 私の顔が、私を覗き込んでる。

 え、なんで?

「うぎぃっ?」

 また、ソラタの声。

 私が話すと、ソラタの声がする。

 ソラタ!と呼んでみる。すると自分の声の代わりに聞こえてきたのは。

「あーっあた!」

 もう一度。ソラタ!

「あーった!」

 私を覗き込んだ私が、にっこりと笑った。自分でも見たことのないくらい、無邪気な笑顔。その笑顔に思わず両手を伸ばしてみる。

 その手は。

 小さくて、まあるくて、ふわふわの。

 ソラタの、手だった。

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