第14話

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「勿論、半分は正解ですよ。お二人には聞きましたから…『ご自宅にはカラスが良く来られていますね?』とそれには『はい』と答えれました。それに田中さんがおっしゃったとおり、アトリエの美術品の整理をしているとき不注意で庭先に置いたところを桐箱ごとカラスに持って行かれたようです。その後の行動も田中さんの指摘通り。たまたま奥様に認知症があり徘徊追跡用のGPSを使用していたという事と鳥の習性を考えると…、ひょっとすればこの九谷焼の有る場所が特定できるのではないかということで行動したそうです。場所がここだという事は直ぐに分かったようですが、意外だったのはまさか手紙の返信が来るとは思わなかったようです」

「大事なものだろうに、直ぐに探しに来なかったんだ」

「ええ、やはり足腰の悪さもあって、ほら車に乗った目つきの悪い連れって言うのが不在だったらしく日数が伸びたようなんです」

「しかし割れていたら元もこうもないだろうに…」

 ロダンが頭を掻く。掻きながらすまなそうに言った。

「そこがね…不正解なんですよ、田中さん」

 眉間に巡査が皺を寄せた。

「そこ?」

「ええ」

「何が?」

「いえ、割れていたらというところです」

 巡査の唾を飲みこむ音がした。ひんやりとした冷たさが背筋を這うのを巡査は感じると、自分の間違いを恐る恐る聞いた。

「…それが…、間違い…?」

 聞くや否やロダンが九谷焼を地面に落とした。

 巡査の目にそれはゆっくりと残影を残しながら、しかしどこか速く気持ちを押しのけて、やがて地面に激しく転がり落ちた。

 声にならない叫びの後に、目を覆う手の向こうで九谷焼は落ちてそれはバラバラに

 …砕けなかった。


 沈黙とは、

 予想される期待を打ち破られた時に鼓膜の奥に響くものなのだと、巡査は初めて知った気がした。

 何故なら九谷焼は粉々にならずまるでゴム毬のように床に転がっているのだった。

 それをロダンが無造作に手に取り、ぽんとテーブルに置いた。

 はて…、自分はどこで間違えたのだろう。

「そう思いたくなりますよね」

 ロダンがポンポンと九谷焼を叩く。

「僕もね、最初はこいつが本物だと思ったんです。でもですよ、翌日あの生首のレプリカを手にした時の感触というか質感が、この九谷焼と似てるもんですから…、もしかしたらと思って…恐る恐る触ってみたんです」

 まだ驚きから覚めない巡査の視線を跳ねるように、今度は掌で九谷焼を叩いた。

「そして結論がやがてこうして導かれたのです」

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