武術と魔法 強いのはどちらですかね?

だんて・らいおん

プロローグ――逃走と追撃――

雨は冷たく。

 このどんよりとした夜道をより陰鬱に彩っているようだった。

 あたりは沼地で、ここは『シオンの沼地』と呼ばれる場所で、〝敵地境界線〟が間近にある。

 そんな場所で俺達はタボットと呼ぶ馬戦車にのり戦地から駐屯地へ、その帰路だった。


『帰路につく』とは言いようだ。

 俺達は戦場から撤退しただけだ。だが、とる兵長が言った言葉がある。

「我々は〝撤退〟をするのではない!後ろへと進軍するのであるッ!」と――

 その言葉は兵士たちの士気の砕くを防いだばかりでなく、むしろ高めたのだとか……

 戦いとは、強靭な肉体だけでなくその〝精神力〟も必要だと言うことの証明だ。


 だから俺も同じセリフを使った。

 皆がこの物語を知っていようとも、リベンジに、明日を生きる心を持たせるために……


「うぐぁああああッ!」ひとりの兵士が陰湿な空気のなか、うめき声を上げる。

 その声からは痛みに苦しみが伝わってくる。


 彼に駆け寄り声をかける。

「大丈夫か!?しっかりしろ」

 声を掛けた時にはすでに息を引き取っていた。

 悔しさと彼の無念、それから怒りに下唇を噛みしめていると、ひとりの兵士が声をかけられた。 

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