第12話 隣国少女

「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 〇〇少女ワールドは大金の賞金が出るオンラインゲームです。

「お友達を狩りまくる! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「出陣じゃ! 天下布武じゃ! ズームイン!」

 朝から元気な真理亜。

「ストップ。」

 お約束のちょっと待ったコールをかける楓。

「なぜ止める!? 妹よ!?」

「お客様よ。」

「え?」

 そこに一人の知らない少女が現れる。

「どうも。お邪魔します。」

「ああ!? 不法侵入だ!? 警察に通報してやるぞ! 渋谷区渋谷には渋谷警察署があるんだからな!」

「やめいー!」

「ゲホッ!? アベシ!?」

 真理亜は楓の飛び蹴りを食らって吹き飛んだ。

「賑やかな所ね・・・・・・。」

「どうぞ。お気になさらずに。」

 激しい姉妹ゲンカにひくお客様。

「私の名前は神宮前子(カミノミヤ・マエコ)。私の領地は神宮前よ。」

 現れたのは渋谷区渋谷のお隣の神宮前の少女だった。

「その神宮前が渋谷に何の用かしら?」

「同盟の申し込みに来ました。」

「同盟!?」

「そうです。神宮前と渋谷の同盟です。互いに助け合い、お互いの領地を最後の2か国になるまで侵略しないということです。」

 これが世にいう渋谷と神宮前の同盟である。通称、渋神同盟。

「いいでしょう。悪くない条件だわ。私たちは南を、あなたたちは北を攻めることに戦力を集中できる。」

「それでは同盟成立ですね。」

「ちょっと待った! 今、神宮前は空っぽ。それに君主の前子も渋谷にいる。ということは、ここでこいつを倒してしまえば、簡単に神宮前が手に入るのだ!」

 真理亜は前子を倒そうと挑む。

「やめて!? お姉ちゃん!?」

 と言いつつも、楓は心の中で(おバカな、お姉ちゃんにしてはいいアイデアだ。アハッ!)と姉を応援していた。

「死ね! 前子!」

 神宮前子に襲い掛かる真理亜。

「フッ。」

 恐れることも無く余裕で立ち尽くしている前子。

「ギャアアアアアア!?」

 何かに吹き飛ばされる真理亜。今回は良く吹き飛ばされる真理亜。

「前子には手は出させないわよ!」

「私たちが守る!」 

 神宮前子を守るように二人の少女が現れる。

「何者だ?」

「表参道子!」

「原宿子!」

「私たちは前子様を守る! 前子様のお友達だ!」

 現れたのは神宮前子のお友達のオモテサン・ミチコとハラ・ヤドコだった。

「どうりで敵地に一人で来ても余裕で涼しい表情をしている訳だ。お友達を隠していたとは。」

「私を心配して、どうしてもついてくると言ってきかなかったのよ。」

 お互いに緊張が走る。

「それでは失礼するわ。そうそう、お友達至上主義の〇〇少女ワールドでは、同盟を破った領土は爆発するという噂だから、気をつけてね。」

「そちらこそ。お友達を裏切る奴は最低だからな。覚えてろよ! 最後まで残って、必ずぶっ潰してやるからな!」

 神宮前子たちは渋谷区渋谷から姿を消して行った。

「あれ?」

 何かに楓が気づいた。

「どうしたの楓?」

「表参道駅って、住所は港区だったと思ったんだけど、私の気の性かな?」

「アアアアア!? 本当だ!? 表参道って、港区じゃん!? ズルい!? 神宮前!? 〇〇少女ワールド政策委員会に訴えてやる!」

「やめなさい。腐っても同盟を結んでいるんだから。」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す真理亜であった。

「フッ。」

 帰り道、不敵に笑いを見せる神宮前子。

「どうしたのですか? 前子様。」

「あの真理亜とかいう少女、同盟が成功しなければ、敵地不覚に入った我々が一気に占領行為に計画を移すことを見抜いていたようだ。だから、あのようなおバカな行動をとったのだろう。」

「なんですって!?」

「では!? あのおバカキャラはわざとだというのですか!?」

「恐ろしい少女だわ。大神真理亜。」

 これは神宮前子の勝手な思い込みである。

「道子。国連大学に連絡して、直ぐに優秀な人材の育成と化学兵器の研究を急がせろ。」

「はい。前子様。」

 神宮前には国際連合大学があるのだった。

「こらー! ストーリーなんか入れるから、私の出番が減ったじゃないか! どうしてくれるんだ! このハゲ! アハッ!」

 当の本人の真理亜は元国会議員みたいに吠えていた。

 つづく。

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