第5話 姉を妹が支配少女

「お友達を増やして天下布武じゃ! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語である。


「よし! 兵士を鍛えて強くして士気を高めて、天下布武じゃ!」

 現代的に言うと、ただの社員教育である。

「それにしても日本て、仕事が出来なくて使えない人間ばかり残って行くのね。」

「コネや足の引っ張り合い、他人をいじめて辞めさせて自分が残るというつまらない人間ばかりよね。」

 これが日本の年功序列である。どんな手段を使っても居座れば勝ちである。

「それに比べて私の兵士たちは死をも恐れないで、私のためなら命を懸けてくれる忠実でよく働く兵士ばかりよ!」

「お姉ちゃんが超能力でマインドコントロールしてるからでしょ。」

「アハッ!」

 真理亜の兵士に自由はなかった。

「兵士のマインドコントロールを解くためには、私が死ぬしかない。」

 いつものように死に装束に着替える真理亜。

「私が全責任を取り、この命を捧げましょう!」

「切腹! 切腹! 切腹!」

「楓ちゃん、そこは「お姉ちゃん! 死なないで!」でいいのよ?」

「切腹! 切腹! 切腹!」

 聞く耳をもたない楓。

「クソッ! おまえも私のタイキックで操り人形にしてやる!」

「サイキック! お姉ちゃん! 少しズレてるよ!」

「アハッ!」

 お約束の展開。 

「くらえ! マインドコントロール!」

「甘いわよ! お姉ちゃん! マインドコントロール返し!」

 真理亜のマインドコントロールは楓に跳ね返された。

「ウワアアアアアー!? やられた!?」

 真理亜の大神家は超能力を使える一族なので、妹の楓が使えてもおかしくはない。

「それではお姉ちゃんにも天下布武をするために相応しい教養を勉強してもらいます。」

「はい。分かりました。我が妹よ。」

 真理亜は楓のマインドコントロールにかかっているので、少し気持ち悪い。

「一時間目、国語。」

 真理亜は兵士たちと同じく国語のテストを受けることになった。

「はじめ!」

 国語のテストが始まった。

「ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダー!」

 猛スピードで国語の問題を解いていく真理亜。

「キンコンカンコン~!」

 国語のテストが終わった。

「どう? お姉ちゃん。テストの調子は?」

「バッチリよ! 100点満点は確実ね! アハッ!」

 自信満々の真理亜。

「え~テスト用紙を返します。」

「100点! 100点! 100点!」

 まだ夢を見ている真理亜。

「その前に、一人だけ名前を書いていない者がいたが、その者は0点とする。」

「バカね。自分の名前を書かないなんて、あり得ないわ! アハッ!」

 そして、名無しの権兵衛を残して全員のテストが返された。

「楓。私の答案は?」

「ないわよ。私の手元に残っているのは、名無しの権兵衛さんだけよ。」

「ええー!? 私の名前は名無しの権兵衛だったのか!?」

「驚くところは、そこじゃないと思うんだけど。」

 驚くのは自分がテストの答案用紙に名前を書き忘れたことである。

「ああー!?」

 その時、テスト用紙を見て真理亜は何かに気づいた。

「100点よ! 私の点数は100点満点よ!」

 なんと名無しの権兵衛の点数は100点だった。

「あっそ。それが何か?」

「ガーン!」

 名前を書き忘れた時点で論外である。


「スースー! ピヤピヤ!」

 その夜、楓は眠っていた。

「そこじゃない!」

 スカッと起きる楓。

「危ない!? もう少しで面白ネタを見過ごす所だった!?」

 アイデアの神が降臨した楓。

「おバカな姉を小学一年生の私がマインドコントロールで操る!」

 まさに棒人気名探偵的なアイデアだ。既に支持者はいる。ウケることは間違いない!

「これなら毎回同じ展開のテンプレート型でも、〇〇少女ワールド的な物語の流れができる。」

 おそらく1話2000字を超えるくらいのちゃんとしたやつ。

「勝った!」

 夜中にほくそ笑む楓。

「アハッ! アハッ! アハッ! アハッ! アハッ! アハッ! アハッ!」

 もちろん楓もアハ教信者。

「うるさい! 楓! 真夜中に笑うな!」

 眠りを妨げられて枕を飛ばしに来る真理亜。

「ゲフッ!?」

 顔面に枕が命中して気絶する楓。

「誰も私の眠りを妨げることは許さねえ!」

 これでも仲良し姉妹なのである。

 つづく。

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