嫌われ者の日記

翡翠

第1話

「遠い昔に、海に囲まれた大きな国がありました。

そこに住んでいる者達は皆、幸せそうに暮らしており、他の国に住んでいる者達もそこに一度は住んでみたいと言うくらい平和な国だった。


…しかしこれからこの国に悲劇が訪れるのは、そう遅くなかった。

この国では印を持った者は不幸を齎す存在として嫌われており、その国の王家に印を持った男女の双子が産まれてしまった。


城内の者達は国民にそれらを知らせない為に…」


『ねぇ、ラウ…またその話?俺それ聞くの嫌いなんですけど』


ラウ「……リウ」


リウ『…それを聞いて気分がよくなるやつなんて俺らを嫌いな奴だけだよ。』


リウはそう言うと、ラウから本を取り上げ、それを部屋の奥に思いっきり投げた。



ラウ「あっ…………」


リウ「ヒスイ兄とこれからチェスやる約束あるから」そう彼は言い、部屋を出た。


ラウは何も言わず、リウに投げられた本を拾い上げた。


【リスト王家と双子のはなし】


ラウ「…………」

本を大事に抱えながら、それを元あった場所に戻す。

部屋は沢山の本棚で囲まれており、まるで図書室と言われている所に似ている

ラウは沢山の本を指でなぞっていく。

ピタ、と一つの本で指を止めた。


【しらゆきひめ】


それを手に取り、ゆっくり読んでいく。

自分もこの毒林檎を食べてみたいなぁ等と考えながら。



____________城内【夜】


夜の食事…カゾク、という者が集まり、静かに食事をする事。

ラウが着いた頃にはほぼ全員が揃っており、残りはヒスイという者のみだった。


リウ『遅いぞラウ』


ラウ『……ごめんなさい』

静かに席に座り、ヒスイが来るのを待つ。

他に誰かが何かを言うことは無かった。


ヒスイは10分後にやってきて

『母上父上、そして弟妹達…遅れてしまって申し訳ない。』と謝罪をしそのまま席に座った。


王妃『構いません。さぁ、ヒスイも集まった所で食事を始めましょう』

王妃がそういえば各々は運ばれてきた食事を口にする。ラウを除き皆楽しく食事をした。


自分はまるで空気のようで、この時間は辛かった。


食事も終わり、部屋に戻ろうとするとリウに声をかけられた。

リウ『おい、暇だろ!時間寄越せ!』


ラウは何かを言う前にそのまま手を引っ張られる。


黙って着いてくと、城の外にある花畑に着いた。

ラウ『……これが、どうかした?』

リウ『それだけ…?もう少し、こう…わぁ綺麗!とか素敵……とか……なかった?』

ラウ『……いつも見てるし…りんご畑だったら喜んでそう言ってたよ』

リウ『…………食いしん坊がよ〜』

ラウ『……違う』

リウ『別に気にすんなって、俺がまたヒスイ兄と一緒に林檎取ってラウにやる!俺兄ちゃんだしな!』

ラウ『…!ありがとう、でもリウは、おとうと…………』

リウ『兄ちゃんだし!!』

ラウ『……ふふ』

リウ『な、なんだよ……』

ラウ『……ありがとう』

リウ『…………べっつに。じゃあ冷えるし寝ろよ。』


そう言ってリウはそのまま城に戻って行った。


花を愛で、これらが全部林檎だったらいいなあなんて。

部屋に戻る途中、使用人達の囁き声が聞こえた。


「忌み子が私達よりいい生活してるとか本当に理不尽な世の中ね」


「こらこら、忌み子が可哀想でしょう?…それに本人達はそんなのに気がつけない鈍感なのですから、こんな話聞いても理解できないのですよ」


「忌み子がこの城から消えてしまえばよかったのに」

____

__________ ???にて(夜)

青年と女性が話をしているのが聞こえる。


女性「聞いて聞いて聞いてー!!今日我憎たらしいGを焼き殺してやったわ!!!」


男性『………おうそうか、おめでとう。あんたも一緒に焼け死んでくれて構わなかったぞ』


女性「あん酷い……そんな冷たい態度取らなくてもいいじゃんかあ、我らの仲だろ〜?」


男性『僕はお前と親しい仲になったつもりはない。散れ。俺を1人にさせろ。』


女性「我神ぞ!?祟りでも起きてしまえ!なんなら自分の心を揺さぶられるようななんか、あの、あれ……あれなんて言うんだっけ?」


男性『……知るか。』


そうくだらない話をしていると、1羽の梟が飛んでくる。


女性「おや、面白いものを見つけてくれたようだぞ、夜の見回りだ。早く行くぞ、アルト」


アルト、と呼ばれた青年は面倒くさそうにしながら近くにあったランプを持ち建物から出る。


女性「……今日は素直だな?明日槍でも降るのか?」

アルト『……戻ってもいいんだぜ?』

??「あー嘘嘘!ごめんって!」

女性は後ろから何か視線を感じた。ちらっとアルトを見るが、何も感じて無い様子なのを確認し、女性は何も言わず見回りを始めた。

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