遠い昔の人間のはなし

小倉さつき

遠い昔の人間のはなし


昔々の遠い昔。

人は背中に翼を持っていた。

人はその翼で、空の生き物たちと共に自由に空を飛んでいた。


また、水の中でも呼吸をする事ができた。

海の中を深く深く潜り、海の生き物たちと共に泳ぎを楽しんでいた。


ある時、横暴な人が言った。


「人間は、空を飛ぶことも出来る。海を泳ぐことも出来る。

 なにも恐れるものなどない。

 人間こそが、頂点に立つべき存在なのだ。」


その言葉を受け、人はほかの生き物を排除し始めた。


その行動に怒った神様は、人から翼を片方奪ってしまった。

人があまりに増えすぎたので、神様もすべてを奪うことができなかったのだ。


こうして人の背中には、片翼だけ残った。

ひとりだけでは飛べないので、人は誰かと手を繋いで空を飛ぶようになった。


しかし、それも長くは続かなかった。

相手と調子を合わせられず、ケンカをしてしまう人が増えたからだ。


人は、だんだんと空を飛ばなくなった。

使われなくなった翼は、そのうち背中からぽろりと取れていった。

そして、翼を持つ人は、誰ひとりとしていなくなった。


そして人は、また空を飛ぶことを夢見た。

今度は空を飛べる乗り物をつくるのだ、と言って。


人間は懲りない。

と、神様は呟いた。


次はきっと、海を泳げなくなるようにしてくるのだろう。

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遠い昔の人間のはなし 小倉さつき @oguramame

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