吟遊詩人と吟遊詩人
10杯目 休日の日の過ごし方
勇者召喚暦二〇二〇年・六月十五日・ルーナ:曇り
ふぁ~、眠い。自宅のベッドから這い出ると、時刻はすでにお昼過ぎ。
さて、本当だと今日からまた大工の親方を手伝う予定だったんですが……諸々の事情でお休みになりました。よしっ……飲みますか!
悪い考えが一瞬浮かびますが、流石に我慢です。ちょっと行っておきたい場所もありますからね。
そうして遅めの昼食を終え、向かった先はポサダの街の女神教会。
祭られているのは、この世界テンプレンを創造し、異世界から勇者、聖女を招く女神エノテーカ。吟遊詩人の歌う神話にも頻繁に登場する割と馴染み深い存在です。
あとエノテーカはどんなに小さな村にも必ず教会があるので、吟遊詩人たちの間で情報交換の場として使われています。
今日、ここに来た理由も一つはそれだったりします……。
中に入ると目に飛び込んでくる巨大なステンドグラス、続いて天上を支えるアーチ状の無数の柱……いつ見ても凄いですね。確かゴシック建築でしたっけ?
数代前の聖女がこの建築様式を特に好んだらしく、各国から技術者を集め数年がかりで異世界の技を再現させたのだとか……。王都の大聖堂などは特に有名です。
吟遊詩人の師匠に以前教えられたことを思い出しつつ、端のほうへ移動します。
そこに置いてあるのは簡素な机と一冊のノート、加えて鉛筆と消しゴム。この一般的な筆記用具も、元々は異世界の品だというからなんだか不思議な話です。
そんなことを思いつつ、ページをパラパラと……。
あ、結構増えてる……街を数日離れている間に何人もの吟遊詩人がここを訪れたみたいです。まぁ、私のように半ば定住している方が珍しいですからね……。
ふむ……当代の勇者と聖女がこの街の近くまで来てるっぽい?
へぇ~、王都で近衛騎士と公爵令嬢の道ならぬ恋が……。
!? 度数七十七のお酒発売?! 勇者の新蒸留技術で実現!? 味! 味は?! 手の消毒に使用可能、医療の安全面向上とかどうでもいいんですよ?!
むぅ~、いつか味見しないと……。東の霊峰エーベレス、今月中に小鬼殲滅。
これはいい知らせですね。あとは……ふ~ん、最近の王都ではこういう歌が流行ってるんですね。追放とか復讐ものですか? なるほど、なるほど。
小一時間ほどかけノートを読み終えたら、少額ですが寄進をして外へ。
教会側の厚意で場所を貸してもらっていますからね……こういうのは大事です。
さ~て、あとは少し早いですけど、馴染みの酒場で飲みますか。
今夜のおつまみはなにがいいかなぁ~、とか考えながら歩き出すと、少し遠くから聞こえてくる子どもたちの賑やかな笑い声。
この教会に併設された孤児院からでしょうか? そう思い視線を向けると予想通り、数人の子どもたちが楽しげに遊んでいました。
彼らのお世話をしているのは、両目を包帯で覆った若い女性の神官。
ふぅ~ん……元気そうじゃないですか……さっ、お酒! お酒!
夕方、酒場を訪れると店内では見慣れない吟遊詩人が演奏をしていました。
先ほどのノートを書いた人物の誰かでしょうか? う~ん……この感じだと、今夜は出番がないかもしれませんね……。
まぁ、たまには人の演奏を聴いて飲むのもいいものです。
お姉さん! お酒とおつまみを! あと、吟遊詩人さんへリクエスト! そうですねぇ……お酒関係で数曲!
なんですか? これも勉強なんですよ、勉強! さぁ! 飲みますよぉ~!
今夜のお酒
サントルーブルー(麦酒)(度数5):一杯
北に松 純米吟醸(度数14以上15未満):三本と少々
おつまみ
揚げ出し豆腐、タコのお刺身、焼きナス、サラダ、オムライス
連続飲酒日数:十一日目
あれ?! 結局、どんな味のお酒か分からなかった!!
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