放課後教室ダイアログ

柊かすみ

第1話 - まずは説明を

「まずはこの作品がどういった形式をとっているのかについて説明する必要があると思ったのですが」

「そうだな。他のものとは良くも悪くも違うようだからな」

「……まぁそうですね。確かに、悪いところもあるのは事実です」


「これは、私と貴方との対話をせっかくだからと物語形式にまとめてみたものです」

「すまないがちょっと待ってくれたまえ。いろいろとツッコみたいのだがまず、その『貴方』って呼び方、やめてくれないか? なんだかむず痒いし、なによりわかりにくいと思うんだ」

「……では以後、貴方をコウと、私をオツとします」

甲「いや、それはいくらなんでも無味乾燥としすぎている。これはそんな硬派な作品なのか? 普通に名前で呼びあえばいいだろう」

乙「それだと私達の重要な個人情報がダダ漏れ状態になってしまいますが……。あとコウにとっての『硬派コウハ』が少し気になります」

甲「フルネームじゃなければ大丈夫なんじゃないか? 個人を特定できるほど珍しい名前でもないわけだし」

美遊みゆう「了解しました、遊真ゆうま

遊真「……だからってそんなすぐに呼ばなくてもいいだろう……」

美遊「こうして文字にしてみると、私達ってエンジョイしてそうな名前してますね」

遊真「そんなことより本題を」

美遊「了解しました、遊真」


美遊「これは、放課後の教室で行われた私と遊真との対話をせっかくだからと物語形式にまとめてみたものです」

遊真「もう一つツッコみたいんだが」

美遊「……つまりこれは、私達の甘酸っぱい青春を物語形式にまとめ、インターネットの海に解き放とうという悪魔的な試みです」

遊真「ちょっとツッコませてもらう。そういった誤解を招く言い方はよくない。これは、文芸部の幽霊部員なこやつが自身の立場を守るために俺を巻き込んで小説投稿サイトに投下したその場しのぎの創作物だ」

美遊「話は変わりますが、ジャンルは『ラブコメ』でいいですよね」

遊真「ちょっと待て何を勝手に決めているんだ怒ったのか?」

美遊「だめですか?」

遊真「だめだ。これはどう考えても『エッセイ・ノンフィクション』だろう。スパム行為よくない」

美遊「いいじゃないですか。厳密なノンフィクションではなく、ところどころ脚色しているのですし」

遊真「よくない」

美遊「……放課後の教室で身を寄せ合い、一つのキーボードを交互に叩く。この様子は脚色せずとも第三者からはラブコメに映りますよ」

遊真「」

美遊「ほらなんとか打ち込んでください。貴方の番ですよ、遊真」

遊真「」

美遊「今の状況を読者に説明しますと、真っ赤な顔の遊真が私の瞳をじっと見つめて愛の言葉をささy」

遊真「嘘よくない。人の第一印象を悪くしないでくれたまえ」

美遊「別にそういった意図はありませんが。……本題に戻りましょう」

遊真「そうやってジャンル問題をうやむやにするのもよくない」


美遊「……思ったのですが、もうあとは実際に先を読んで知って頂くってことではだめですか? 最低限のことは伝えましたし、言ってはなんですが多分すべての読者がすでにブラウザバックしていると思いますよ」

遊真「悲しいことを言うなよ……」

美遊「悲しくなんてありません。これは私の『その場しのぎの創作物』です。それに、読者なんかよりもっと大事な存在が私の隣にいてくれています」

遊真「恥ずかしいことを言うなよ……」

美遊「そんな私達の放課後ラブコメ、始まります」

遊真「結局ジャンルはラブコメなのかよ……」

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