恩返しから始まる聖女様と普通の男子高校生のラブコメ学校生活〜僕はこの学校の聖女様を助けると、恩返しをしてくれた。そのお礼をすると、また恩返しをされた〜

一葉

僕と聖女様の出会い

第1話 聖女様との出会い

「どう、すればいいんだ……?」


 僕は、とある事態に遭遇してしまっていた。


 学校も終わり、アパートに帰ろうとしている途中。


 僕の視線の先には、僕と同じ高校の制服を着た女子生徒が、男3人に囲まれているという状況があった。


 女子生徒の制服から察するに、同じ高校の人であることは分かる。けれどよく見えない。


 とはいえ、こんな状況だ。困っていることだけは、確実にわかる……。


「周りには、人が居ない。そして、あの女子が一人であの状況を解決できるとも思えない」


 うーん…………。


「はぁ……仕方ない」


 どうせ僕があの状況の中女子の加勢に向かったところでボコボコにされる気しかしない。とはいえこの状況を放っておくわけにもいかず、なんの策もなく男3人のところへ突っ込んだ。


「おいっ!」


 僕は男3人に向かって叫ぶ。すると彼らは、襲われていた同じ高校の女子から意識をこちらへと向ける。


「あぁ……?」


「なんだ? 何の用だ?」


「この子と楽しく話してるところだから、邪魔しないでくれる?」


 敵意丸出しで飛んでくる言葉の数々。元々奥手な性格の僕だから、思わず怯んでしまう。……けれど、ここではいそうですかと離れたら女子を見捨てることになってしまう……。


「…………あの、その人が困っているだろ、放してやってくれない、かな?」


 ヤンキーの威圧に少し怯んだはしたものの、有機を出して震えた声で言葉を返した。


 すると、ヤンキーたちはもともと悪い目をさらに鋭く尖らせ、叫んできた。


「分かった……っていうと思ったか!!」


「はっ、正義のヒーロー気取りか!!」


「なんでお前の言うことを聞かなきゃならねぇんだよ!!」


 ……やっぱりだめか。ヤンキーってだいたい……というかほとんど他の人の話を聞いてくれないからな。


 なんて考える暇もなく、3人は一気に僕に向かって殴りかかってくる。容赦のない大ぶりである。


 ホイッホイッホイッ


 甘いんだよ……っ、ヤンキーさん。


 なんて、華麗にかわ……せずに、3発とも当たってしまう。


 ぐへっ……痛いな……、こんにゃろぉぉぉぉ。とんでもない激痛が僕を襲う。涙が溢れてきたのか、視界がかすんでしまった。


 ……で、でも、次は僕の番だ。容赦はしないっ!!


「お、おりゃあ!!」


「……ん、これが当たるとでも?」


「………へ?」


 僕は、思いっきりヤンキーの1人に向かって殴り返そうとしたのだけれど、いとも簡単に止められてしまった。


 こ、こうなったら……!


「君、逃げるよっ!」


「へ?」


「お、おい!」


「こらぁ!! 待てー!!」


「卑怯だぞ!」


 そもそも男3人が女子一人に迫る時点でそっちの方が卑怯だろ。今さら卑怯もなにもないやい、なんて愚痴を吐きながら、襲われていた女子の腕をさっと掴むと、僕は自分の住むアパートに向かって走り出した。


 後ろから、なにかヤンキーたちの声が聞こえて怯んでしまうけど、気にしなかったら問題ない!


「はぁ……はぁ……」


「はぁ……はぁ……」


 なんとか人の多いところに出たことで、ヤンキーたちからは逃げる事ができたようだ。


 疲れてしまったし、と、近くの公園のベンチで休憩することにした。


 そして、さきほどなにがあったのか聞こうとしてその女子の方を振り向いてみる。


 その時のことだった。


「大丈夫で……って、えぇ!? せ、聖女様? 聖女様です、か?」


「…………まぁ、学校では一部の人からそう呼ばれている人です」


 やっぱり聖女様だ……。雲の上の人と話すなんて……!


 はじめて聖女様と喋ったかも。


 僕の横でベンチに座っていたのは、僕の学校にいる一番の有名人。聖女様とみんなから崇められる的な存在、東雲琴葉(しののめことは)だったのだ。


 ちなみに聖女様の由来として、すごい綺麗で、勉強もできて、優しくて……完璧だから、あと、アニメの美少女的な存在だからっていうのがあるらしい。


文武両道。

容姿端麗。

才色兼備。


 この全ての言葉は、もう聖女様から生まれたものと言われても納得できるほど。


 僕は、初めて聞いたときは、それは言い過ぎでしょとか思っていたが、今近くで見るとすごい納得できる。思わず見惚れてしまった。


 神々しい……。


 そう思うと、僕は腕を掴んでしまったことをすごい後悔した。何かしらの別の方法で逃げればよかったのだと考えて、慌ててしまった。


「えぇ……っ、あっ、すみません、腕とか掴んじゃって」


「い、いえいえ……っ! 助けてくれてとても助かりました。あのままだったら、あの人たちに何をされていたか……」


「……い、いえ、そんな、とんでもないです!」


「本当に、ありがとうございました!」


 聖女様は、僕に向かってニコリと笑みを浮かべると、お礼をしてくれた。


 めっ…………っちゃ眩しい。もう聖女様は本当は神様なんじゃないか? っていうくらい。


 僕は、自分の顔がどんどん赤くなっていることを感じた。すごい恥ずかしくて、だからバレたくなくて、僕は聖女様と反対方向の方を向いた。


 ひっひっふぅ……。ひっひっふぅ……。


「……よしっ」


 呼吸も安定してきてなんとかいつもの状態に戻すと、僕はもう一度聖女様の方を向いた。


「じゃあ、明日」


「……え? あっ、はい。また明日」


 僕は、本当はなんで襲われていたのかとか聞こうと思っていたのだが、聖女様が襲われていたと聞くと、納得できる。


 だって、僕も襲いたくなるもん。


 それに、聖女様はとても怖い体験をしたに違いない。それを掘り返すのも、なんかちょっと違う気がする。


 ……まぁ、そういうことだから聞かないことにした。それに、緊張もするし。……っていうか、こっちのほうが本命な気がする。


「……ふぅ。これはヤバい」


 聖女様に恋に落ちそうになったけど、一目惚れだけはなにか聖女様に負けた気がするので、変なプライドでなんとか阻止した。


 でも、何回も話していれば絶対に恋に落ちてしまうと思うんだよな……。さすが聖女様。


 でも……もう話すことは無いんだろうな。


 少し寂しい気持ちを抑えながら、僕は帰路へつくのだった。

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