ゲーム・ボーイ1

 四千年を経て異星の情勢は大きく変わった。

 トゥトゥーラ、ツィカス、バーツバ、ホルスト、バーツィット、コニコ、エシファンはそれぞれがそれぞれに関係し、成長、発展、また、一部では足の引っ張り合いをしつつも、異星における先進国の位置につけていた。大陸の三国は周囲の小国を巻き込み同盟を確立し、グレートアース、通称GEと呼ばれるようになる。GEは異星において強大な影響力を発揮。半球の中心としてその立場を強固なものとし、経済、文化、教育の最先端となった。

 コニコとエシファンは長くドーガ(ツィカス・バーツバ)に支配、搾取されていたため一歩劣るが、エシファンにはCDEモーターズの本社がある。かつてはドーガのお抱え企業であったがそれも昔の話。今ではエシファンを代表する大企業として世界に進出し技術水準の向上や物流の円滑化に寄与している。それでなお一歩劣る理由は政治的な理由は大きく作用しているのだが、あまりに複雑かつ冗長すぎて語る気も起きない。端的に述べれば、外も中も揉め事だらけという事だ。また、コニコはエシファンと一定の距離を取りつつ外海の国と独自の交友を築いた結果、レベルはともかく、一筋縄ではいかない国へと変貌を遂げた。使用されている技術も独自規格が多く、いわゆるガラパゴス化が進み違う意味で注目を集めいている(当然異星にガラパゴス諸島はない)。

 これらに加えてもう一国。フェースも国としての機能を有している。

 フェースが再度独立したのはつい最近のでき事である。各国に流れていたフェースルーツの遺伝子を持つ人間達が終結し、バーツバ、ツィカス相を相手取り国際法廷に訴えたのは大きな話題となったのだが、一部のメディアや識者からは『不当に金を得たいだけの下賤な人間の集まり』と陰で蔑されていた。表でそうした声が上がらない理由はまぁそういう事である。世界は随分と人権保護に厳しく、過剰ともいえる保護を進めるようになっているのだ。その善し悪しについては明言を避けるが、少なくとも個人の尊厳が無視され弄ばれるよりはマシではないかと考える。あくまで、両者を天秤に乗せた場合の話であるが。


 こうして国々が発展していったわけでが、その過程において様々な発見があった。奴隷戦争が終わると、バーツバに所属する船が数多の国を発見するのだが、それは従来のように文的水準が低いものではなく、かつてのリビリを彷彿とさせるような高度技術と生活レベルを持った先進国だったのだ。大航海時代もなくほぼ内輪で戦争ばかりをしていたため発見が遅れたが、異星の半球にも巨大な国々が複数存在していたのである。

 新規に発見された外海の国をハーフレッド。ホルストなどがある方はハーフブルーと呼ばれ区別された。丁度間に位置するツィカスとバーツバは0地点やセンターバイオレットなどと呼ばれ、交易の要所として位置しているが、当然争いも起こった。

 この四千年の間で起こった半球同士の大きな争いは二回。一回目は第二次世界大戦として各国に大きな爪痕を残し、未だ関係の回復していない国同士もあって外交問題複雑化の要因ともなっている。二回目の争いは代理戦闘として小国同士が争う形だったが、肥大化するコストに嫌気が差した支援国が放り投げ、結局なし崩し的に終戦。収拾こそついたが根本的な解決が行われないまま現在に至る。対岸の火事を決め込んでいたその他の国は特需により儲けたり、反対に大損を発生させたりしていたが、戦争によって金を得ようとする事がまず重大な倫理感の欠如であるという点を忘れないでいただきたいものだ。


 上記した二つの戦争が終わると世界はまた平和な(小規模な争いがないわけでもないし、未だ内戦を続ける国や貧困に苦しむ人間も多分にいるが)時間が流れ始める。この頃になると娯楽も進化しており、人々は様々な方法で暇を消化し、鬱憤を晴らし、快楽に溺れ、享楽していた。中でも俺が注目しているのはやはりゲーム。コンピュータゲームである。

 異星におけるコンピュータゲームはコニコより開発され、瞬く間に世界中へと広がっていった。記念すべき最初のタイトルはアイランドインベード。そう、スペースインベーダーである。なぜそんな事になったのかというと、恐らく俺の深層心理が知らず知らずのうちに作用したのだろう。また、その次に続々と出されるタイトルも俺のよく知る作品ばかりで面白かった。アイランドインベード稼働より数十年後にはパロディウスの平行世界版ともいえるオマーディウスが発表された際など手に汗握り、ついプレイに耽って異星の観察を忘れてしまうほどであった。やはり横シューはいい。心が洗われる。無心で弾を回避して適解ルートでステージを進む快感といったらない。異星のゲーマー達もきっとそうだろうと俺は思った。俺の深層心理が影響しているのであれば、皆当然同じ気持ちとなり、末永く横シューを楽しむだろうと希望を抱いていた。が、見事に裏切られる。地球同様、やっかいな古参が新規参入者の防壁となり成長は頭打ち。伸びしろがないと判断され、横シューは見事死にコンテンツとなったわけであった。合掌。


 このようにゲームコンテンツはまるで地球のような進歩を遂げていき、ついには俺が地球にいた時代のそのさらに先にまで到達したのだった。超未来の異星で爆発的流行を起こしている体感型ゲーム『テルース』などは超科学技術ゲームの代表格だろう。どういうゲームかといえば、レディプレイヤーとかなろう系のVRゲームみたいなものである。ついに異星の現実がフィクションの域にまでと成長したかと思うと感慨深い反面、モニター越しのゲームの時代が終わってしまった寂しさが込み上げてくる。みんなもっと、二次元ゲームやればいいのに。

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