第133話 なにをさせる気なんですか?
『コントロールから全部署、現時を持ってオストリッチ砲撃型の脅威度が変更されました。新型弾頭が使用された模様で、着弾後爆発でトーチカのバリアを叩き割って破壊された旨、速報が上がったので現状、仮に反映しています』
『CICから関係各部署、データ送る』
この話がホントだったら、ヤバいんじゃ無いの? マジで。
快調に走れる状態だとしても、ナミブなんかただのデカいマトでしか無い。
【指定ポイントまであと157秒/以降上空待機】
地図にはナミブとオストリッチ部隊の中間あたり、スゴく中途半端な位置にマークが付いている。
戦術モニターの時間の数字はどんどん減っていくが、肝心の戦術概要が来ない。
あそこに行って何するんだろう。
『副長からITS、612』
『612ラウド&クリア、どうぞ』
『ITSの作戦目標は砲戦型オストリッチの撃破とする』
スナイプライフル使うの?
とすると、ポイントまでカタパルトで撃ち出す?
でもアレ、雑に扱うとそれだけで命中率が……
『2小隊がオストリッチをつり出すとしても、さすがに距離がありすぎます。……なにをさせる気なんですか?』
『データは今送った、なお詳細はハンガーのサイード少尉から説明する』
何で戦術の説明をする人がメカチーフ……。
もう悪い予感しかしないな、これ。
確かに言われたら、使えそうな装備。あるんだよ。
シミュレーターもだいぶ回したし、こないだ実物も完成しちゃったんだよ。
どころか。搬送用のフライトデバイスまで、出来あがっちゃったんだよ。
『変わってハンガーのサイードだ。嬢ちゃん、RCユニットを使う。援護を頼む』
あぁ,やっぱり。
BAどころか要塞のバリアさえ貫通する砲弾を、最大0.5秒で1発、発射が可能なナミブの対空速射砲、これをBA《バトルアーマー》に装備させよう。
といういつもの“頭のおかしい"構想が、そのままカタチになった612の専用武装。
背中に背負うカタチで装備する、バカでかい箱の横に大砲がついた様な武器。
RCユニット(rapid-fire cannon unit)。
飛行形態ではもちろん使えず、人型形態に変形後に背中に背負うカタチで接続、砲塔は射撃時以外は、腰の高さを軸に上を向いている。
左腕にも補強のアームが取り付き、射撃姿勢時は砲身が270度回転、腰に回った砲を左手で上から掴む形になる
腕に負担がかかりすぎるのでその時点で左腕はパックに固定される。
なにより、重量が通常の1.8倍になる。
――高機動型の実験機なんだよね?
もちろん設計時に想定したのは換装後の出撃。
だけど、チーフがそれで許してくれるわけも無く。
戦闘中に換装する事も考えて、半端な戦闘機みたいなフライングデリバリーユニットも一緒に作った。
せめてこれが出来上がってなければ、こんな無茶ぶりを受けることも無かったんだけど。
つまり空中変型からの空中合体をしろ、と言う事である。
……ついさっき、それで怒られたばっかりなのに。
だいたい、空中変型しつつフライングユニットの分離、その後の空中合体、そして着地。
機体損壊なしで上手くいったの、たった一回しか無いんですけど!
しかもそれ、シミュレーターだからね!
実機での実験はまだ一度もやってない。
『いきなり実戦投入なんですか!? まだ現物での試験、2割も進んでないのに!!』
『シライの計算じゃ82%の確率で問題無く動くそうだ』
……まともに動かない確率が18%ってことですよね!?
シライさんの計算は絶対だろうから、ダメな確率が1/5もあるって……。
『で、612。聞いてるな?』
「へ? 俺? ……あぁ、いえ。612ラウドアンドクリア」
『デリバリーユニットをこれから撃ち出す、空中換装、昨日は上手く行ったんだから大丈夫だ』
「9回目にしてやっと成功したんじゃないですか! しかもシミュレーターで!!」
『おぉ、そんときのデータを元にて最終調整してある。問題無い』
――問題、ないわけあるか!
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