第39話 自分で言うのもなんだけど。
「なにも言ったことは無いけれど。私が何も気付いていないとでも思ってる?」
「……ですよねぇ」
「だから。今回の報告書。これで誤魔化しきらないと、完全に実験動物扱いされるわよ? ――私がそうだったみたいに」
「え、あの……」
「多分、そっちは気がついてるでしょ? ……この年で博士号六つ持ってて、さらに高級士官なんてね。“デサインド”以外、あり得ないもの」
デザインド、とはデザインド・チルドレンのこと。
要するに遺伝子レベルで“設計”され、人工的に生み出された人間。
一応、表面上は新共和も連邦も作ってないことになっている。
目の前に17年前に作られた人が居るけども。
最もデザインドの9割以上が、それでも普通の人間になってしまうのだそうだ。
どうしてなのか、未だに専門の学者でさえも理由をわからないで居る。
但し、設計通りの“性能”が出たらどうなるか。
なんて、説明を聞くまででもない。
さらに確率的に残ったほんの数%の中でも一人、居るか居ないか。
さっきとは逆に計算上の想定を遙かに超えた能力が発現する人達がいる。
例えば、17才にして特務隊の高級士官であったり。
例えば、一晩で
例えば、そのついでに手書きとは言え、簡単なコントローラーの設計図まで書いてみたり。
例えば、その仕様書に従って改修した機体を操って片腕一本で、BA三機を墜としたり。
そういうことが普通に出来る。と言うわけだ。
こうして話している限りは、ただの大雑把で可愛い“センパイ”にしか見えないが。
「自分で言うのもなんだけど。アタマ、良かったんだよ私。“設計目標”を遙かに超えて、ね。――覚えておきなさい? 常識から外れた存在は、どんなに建て前で取り繕おうが結局。奇異の目で見られるんだ」
「……姐さん」
ピー。階段室の中、不愉快な音が一つ鳴る。
メカチーフに聞いたら、聞き漏らさないようにわざと不快な音に聞こえる様にしてる。と言ってたけど。
『ブリッジよりルビィズ、クレセント特務少佐、並びにロスマンズ准尉相当に出頭命令。至急メインブリッジまで来られたい。繰り返します……』
「今度はなんだろ。ホント、便利に使われちゃってさ。まったく、もう……」
不愉快な音で呼び出されて、どうやら機嫌も悪くなったようだ。
姐さんは、おもむろに階段を上るのを辞めて踊り場のドアを開け。目の前のエレベーターのボタンを押した。
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