第5話 今、目の前にっ……!
「――甲板のアールブが破片で動けない!? なんでそんなバカなことになってるの! 良いから変型させて自力でおろせって艦長に言って! ――はぁ!? 私の機体はまだ整備中で格納庫、パイロットもここに居るの! 当前後回しっ!!」
やたらに響く、でもキンキンするわけでも無い声が近づいてくる。
「14番コンテナの被害は軽微、現状全数の無事を確認。誰でも良いから大至急、四,五十人回して! 12番のコンテナだけでも確保、最優先っ!」
インカムに向かって叫ぶ、真っ赤な軍服を着てスラリと背の高い金髪の女性。
「……! まだ居たの!? キミはこんなところで何をしてるのっ!!」
爆風の余波で腰のマントをなびかせて、エマニュエル・クレセント特務少佐がそこに立っていた。
……最期に見るのが彼女の顔だとしたら、それはきっと。すごく良い人生だったんじゃないかな。
「自己紹介してなかったね。私はエマニュエル・クレセント、マニィで良い。……キミは?」
彼女の手が伸ばされる。軍人なのに華奢に見えるな。
「その、……
「キサラギ、かぁ。……不思議な響きの名前だね、お家は極東アジア系? なら。ラギ君、で良い?」
「……何とでも」
「さぁ,立って? 死にたくないでしょ? ……少なくても今、ここでは」
彼女の手を掴んだことで、ここで死ぬ選択肢は無くなった。
「ここじゃ無きゃ良い、ってわけでも無いですけど!」
「死にたくなるのと実際死ぬのはだいぶ違うよね。……わたしも死んだことは無いんだけれど」
何処かで爆発音が轟き、爆風が吹き付けるが。
「おっと! ……平気?」
今度は吹き飛ばされる前にマニィさんが支えてくれた。
「大丈夫? ちゃんと立って。――さ、手を繋いで? そう。――とにかく私と一緒に来る。良い?」
「……でも」
「口答えしない。さ、ちょっと走るよ? ――だから即時迎撃の用意だけはしておいてっていったのに! ……前線に出ない任務特化型部隊なんて、こんなもん。か」
繋いだ左手にグンと力がかかる。
「や、来た来た。……こちらはルビィズのクレセント。――おーけー、十二番のコンテナだけで良いから確保。人力でころがして手動でクレーン回して船に積み込み、急いで!」
あの人達はさっき、五十人回せ! ってマニィさんが怒鳴ってたヤツだな。
さすがに五十人は来なかったが、それでも作業服を着た二十人以上が走ってくる。
「こちらは民間人がいる、――了解。安全な場所に退避させ次第、私もすぐに合流します。先行して段取り、よろしく!」
マニィさんと同じくインカムをつけた数人が敬礼をすると走りながら回りに話しかけ、12、と書かれたコンテナへと走って行く。
ホントになにが入ってるんだ、アレ。
「ん? ――CIC、クレセント。どうしたの? ――! 連邦の
船とコンテナの影から『巨大な人型』の影が現れる。
「くっ、――ナミブ基準絶対座標で10時半に人型形態のオストリッチ出現っ! 各員全力でコンテナから離れて! 至急散開っ!! ……ラギ君、こっちも走るよっ!」
身長10m弱の
「人間相手にライフルを撃つ? 外道がっ! ――ラギ君! 私に掴まって!!」
いきなり抱きつかれたが、その感触を堪能する暇は無く。
――どどどん!多分三回。直後、爆発。
腹に響く、鼓膜が音として捉える限界を超えるような音がとどろき渡り、抱きかかえてくれたマニィさんごと吹き飛ばされた。
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