愛玩人間飼育目録

星 伊香

ドッペルゲンガー

 自分が二人居たらいいなと思った事はないだろうか。

 仕事は代わりばんこですればいいし、遊ぶ時間も増える。だから私はペットの顔に合わせて整形する事にした。ペットをフルオーダーするより私が整形する方が安上がりだし、悔しい事にペットの方がずっと顔が良い。

 整形の完了と同時に引っ越しをして仕事も変えた。これで私達をオーナーとペットだと知る人間は周りに居ない。バーコードさえ隠してしまえば完全犯罪の出来上がり。完璧な計画だと思った、この時は。

 仕事を始めて最初の方は良かった。好きな時だけ会社に行き、それ以外の日は好きに過ごす。でも完璧だった筈の生活は徐々に崩れていった。

 会社で「この前教えたでしょ」「どうして昨日出来たことが出来ないの」と言われるようになった。二重生活を送る上での引継ぎ作業は欠かさなかったが、そもそもペットは私より頭も良い。ホムンクルスなのだから、人間の私より優れていて当然だ。

 そして今日、ペットが会社で告白されてきた。営業の竹内さん。仕事も出来て優しくて、女性社員たちの憧れの人。

「どうなさいますか?」

 同じ顔が私を見る。彼が好きになったのは私とペット、どっちなのだろう。

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