第6話② 誤解から恋は始まり…愛は誤解で終わる?
宏美が沈黙したため、大きな間が生まれた。ディレクターがインカムから声をかけた。
「宏美ちゃん!」
「あ、ごめんなさい。ちょっとボーッとしてました。続いて葉書のコーナーです。ペンネーム、横浜、港のヨーコさん…あれ、ヨーコさんって、あのヨーコさんかし ら…
『宏美さん、私のこと覚えていますか。あの性格は好きでも顔が嫌いな彼氏からプロポーズされ困っていた港のヨーコです』
やっぱり、あのヨーコさんね。
『あのとき宏美さんのアドバイスどうり、彼のプロポーズを受けて、結婚式を挙げ、今は毎日が幸せに暮らしています。この前も、ジャニーズのコンサートに行った時、帰りは、ちゃんと彼が迎えにきてくれました。でも、ジャニーズのアイドルを見た後に、横で車の運転する、腹のつき出た体重百十キロの彼を見ていると、急に訳も分からず腹が立ってきました』
嫌いなのは顔だけじゃなかったのね!
『でも、家に帰って、彼が私のために作ってくれた夕食を食べていると、アイドルは、たぶん私のために夕食は作ってくれないだろうな…』
当たり前でしょう!
『と思うと、車の中での腹立ちはすっかり消えていました。本当に女は自分を愛してくれる男と結婚する事が幸せなんですね。宏美さんの言うとうりにして本当によかったと感謝してます』
良かったわ。
『でも一つだけ、宏美さんの言いつけを守っていないことがあります』
なにかしら…
『それは彼の顔を見ないようにするのではなく意識的に見るようにしたことです…人間の慣れって凄いですね。あんなに気に入らなかった顔も一日中見ていると、どこが気に入らなかったのか分からないほど、見慣れてしまいます。どぶ川でも毎日、見てていれば、ふるさとの川になって親しみが湧いてくる、ということかな』
どんな例えよ…
『とにかく、あの時宏美さんに葉書を読んでもらわなければ、今の私の幸せはなかったのですから、本当に宏美さん、ありがとうございます。そして、早く宏美さんも、性格のいい人を見つけて幸せになってください。それでは、さようなら」
また、宏美が沈黙する。インカムからデレクターの早口の言葉が響く。
「宏美ちゃん、どうしたの。次にいって」
「あ、どうもすいません。次はFAXリクエストです。東京にいる浪速のアキちゃんから…えっ、アキちゃん!
『宏美お姉ちゃん、アキです。バナナタバコを吸っていたのは、うちのお父ちゃんで、恭平お兄ちゃんじゃありません。だから早く、お兄ちゃんとこに帰ってあげてください。お兄ちゃん、毎日お姉ちゃんの帰りをベランダで待ってますよ。リクエスト曲は松田聖子の、もう一度初めからです。お願いします』
アキちゃんたら…」
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