第4話③ 小学生アキちゃん登場。なんでも身の下話が得意だそうで

 顔を上げて話そうとする恭平の言葉を、アキが遮った。

「あ! そうそう、いい忘れたけど、ウチのお父ちゃんから

『お兄ちゃんにおうたら、ありがとうって、ゆうといてな』

 と、言われてんねん。ありがとう! お兄ちゃん」

「ありがとう…て、俺、アキちゃんお父ちゃんなんかしてあげたかな? 」

「このまえ、ウチにお父ちゃんにバナナ味のタバコの作り方、教えてくれたやんか」

「あーっ!! 」

「あの日以来、ウチのお父ちゃん、うれしそうにスーパーでバナナをこうてきては、皮をむいてベランダで干してな、

『これがポールマカートニーの味か』

 なんて言いながら毎日毎日できた粉末を、葉巻につめて、ベランダでイエスタデイを歌いながら吸ってんねん」

「犯人はアキちゃんのお父ちゃんか! 」

「犯人って、お父ちゃん何もしてへんよ。ただ、バナナ味のたばこ、ベランダで吸っただけやん」

「それがあかんねん。そのせいで、俺は宏美と別れるはめになったんや」

「別れたって、お兄ちゃん、宏美お姉ちゃんにふられたん? 」

「それも、これも、宏美の洗濯物に、アキちゃんのお父ちゃんの吸ったバナナ味のタバコの臭いが、ついていたからや! そうや、今ならまだ間に合うかもしれへん。アキちゃん! 」

「なに? 」

「お願いやから宏美に

『タバコはウチのお父ちゃんが吸ったんや。お兄ちゃんは約束破ってない、潔白やで! 』

 て、ゆうてくれへんか」

「お兄ちゃん、悪いけど、それは無駄やな」

「無駄って? 」

「女はタバコの煙ぐらいで部屋を出ていったりせえへんよ」

「ええ! 」

「単に、出て行く口実やな。うん、うん。そうに違いない」

「そんなん、アキちゃん。俺、どうしたらええねん」

「あきらめ! 」

「そんなん、あきらめやって…なんの相談にもなってないやないか。それはちょっと、ひどいんでないかい」

「だってな、宏美姉ちゃんとお兄ちゃんじゃ、どう見ても似合えへんもん」

「なんでや…」

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