第5話② サブリミナルでハゲモテドン! それは人を救うおまじない?

 急に恭平が柱に抱きつき、セミの鳴き声をした。

「ミーンミーンミーンミーン、ツクツクボウシツクツクボウシ―、シイイイイイイ…」

「夏っぽい…それって、昔の回想シーン? 」

 恭平は柱から離れると、手を上げた。

「西田さん、こっちこっち」

「始まった…」

 アキは床に座って、カラオケスピーカーとマイクを横に置くと、三角座りしながら恭平のを見つめた。

「あの日の西田さんはポシェットを肩からかけ、麦わら帽子をかぶっていた。そして、生駒山から大阪を一望しながら

『このへんなの、関西でいちばん空飛ぶ円盤が目撃されているって言う場所は』

 て大きな瞳で僕を見つめた。

『西田さん、本当に僕の話を信じてくれるんだね』

 すると、彼女は笑って答えた。

『もちろんよ。山田君がとなえる、生駒宇宙人基地説って、この前、テレビで放送してたヤツでしょう。私も見たけど、あの放送、信憑性あったもの』

『ありがとう。西田さんだけだよ、信じてくれるのは。他の考古クラブの連中ときたら話さえ聞いてくれない』

 そのとき、彼女がくしゃみをした。

『クシュン』

『西田さん、どうしたの? 』

『夏かぜをひいたのかしら。朝からずっとこうなの。昨日の夜、冷房をかけて寝たのが悪かったのね』

『もうしかして、今日、誘って悪かったかな』

『ううん。大丈夫。私、空飛ぶ円盤を見るの楽しみにしていたから。それに別の約束もあるし…』

『別の約束って? 』

 と僕が聞き返したとき、彼女は東の空を指さした。

『あ、円盤! 』

『え! 』

 僕はズボンのポケットからフィルムカメラ・写ルンですを取り出した。

『どこ、どこ? 』

『ほら、あそこ! 』

『本当だ…すごい! ぐるぐる山頂の上を回りながら飛んでいる…よーし! 』

 僕がシャッターを押そうとした…その瞬間、またも彼女が大きなくしゃみをした。

『ヘッ、クシュン』

『あっ!』

 驚いた僕はシャッターを押しながら大きくカメラを動かしてしまった。

『ごめんなさい…写真、ブレちゃったわね』

 鼻をこすりながら謝る西田さんを…可愛い…と胸ドキュンになった僕は、今日の本当の目的、告白をする決心をしたんだ…。

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