ブレーメンの特殊部隊
有坂瑠利
第1章 はじまりはじまり
プロローグ
居場所をなくした獣たちは、ブレーメンにやってくる。
いつだったか耳にしたそんな噂を、今になってふいに思い出した。
どこで聞いたのかも分からない空想じみた作り話だ。一方で、そんな噂に
所詮、自分のような立場のものが
それでも。
傷つき、迷い、生きることに疲れ切ったこんなにも愚かな身でも。心のどこかで夢見ずにはいられない。
ありのままの自分を受け入れてくれる場所が、ここが自分のいるべきところなのだと思えるような唯一無二の"居場所"が、どこかに存在することを。
夜風が木々の葉を揺らす。流れた雲の狭間から、煌々と輝く満月が姿を現す。
──どうせ朽ちるなら、せめて。
鉛のような身を起こし、おぼつかない足取りで一歩踏み出す。どこへ向かえばいいのか、そんなことは知らない。知らないはずなのに、その歩みに不思議と迷いはなかった。
月明かりが路面に落とす獣の濃い影がすらりと伸び、人間の形を形作った。
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