勇者の身代わりになった俺と僕と私の転生記

すたりな

転生また転生そして転生!

「ぐはああああ!?」


 世界の命運をかけた戦いに敗れ、俺は死んだのだと感じた。




 ――そう、この世界で俺は努力してきた。


魔王討伐パーティに入ることができたのだ。




 俺ができる事は、とにかくすべてだ。


剣、槍、弓、杖、斧eto・・・




 様々な武器を使いこなし、攻撃魔法も使い、


強化補助や回復魔法もある程度使える汎用性の高い立ち位置で、


まさにパーティの中核を担う存在。






 しかし、特化職には頭一つ抜けないそんな状態。




良いところは何でも器用にこなす万能型、

しかし悪く言えば器用貧乏だった。




 15歳から冒険者として技術を学び、

そんな俺も30代後半というベテラン冒険者の立ち位置にいる。




――ランクはBランク。




 ちなみに魔王討伐パーティのほとんどはAランク。




 最弱パーティと言われているところはリーダーがBランクで、

他がCランクといったところだが、




 俺の所属してるパーティはSランクがリーダー、

パーティメンバーがAランクでパーティ内ではBランクは俺一人だけだ。




 そんなパーティに入れたのも、

とにかくサポートに特化してるという事で必ず誰かの穴埋めができる事だ。




 4年前にたまたま冒険者でたまたま組んだ相手から

固定パーティを誘われたところだ。




 その当時はリーダーがまだ駆け出し冒険者だったこともあり、

立ち位置はあの当時から変わってない。


 あの当時はこちらがありとあらゆることで導いてたこと。


 今は逆にリーダーについて行ってる感じだが、

基本的に役割は前から変わってない。




――ちなみになぜBランクのままか?




 パーティの前線に立ち、

何度かケガや呪いなどを受けて戦線を離れていたことがあった。




 パーティーメンバーには本当に気さくなやつでいい奴らが多い。




――本当に最高の仲間だった。




 Sランク冒険者が魔王にとどめの一撃を言わんばかりに、

隙だらけの魔王に必殺技を打ち込めたおかげで魔王は倒れた。




 魔王を前にして何十分の死闘の上、

俺が魔王の必殺技を一人で受け、

パーティの盾になり攻撃を肩代わりしたおかげである。





 ――だが、俺は後悔していない。





意識が途切れる前に魔王を倒してくれたから事と、

泣いている仲間たちからこの言葉を聞けたからだ。




 「私たちを導いてくれて本当にありがとう。お前は最高の仲間だ!」




――そう仲間から言われたこの一言ですべてが報われる気がした。





 こんな人生もありなんだろうな………………。








――そして意識だけの真っ暗な空間で今漂っているのだ。































遠くでBGMが聞こえる………。











あれは携帯のアラームだな………?














 そして飛び起きた。






ボーとして思い返してみる。






凄い夢だな。






俺が勇者パーティの一員?










――無いな!





変な夢を見るもんだな……………。






妙にリアリティのある夢だった。








俺は4畳ぐらいの自室に居た。







時刻はPM20:50







顔を洗って身支度を整える。








異世界か……………。






――次の人生は異世界でもいいのかもしれない。







あ~あ。

あと1時間でバイトか。






身支度を整えて、コンビニのバイトへ向かう。






 今からコンビニの仕事があるのだ。


シフトは週1休みの22時から9時まで。




 そう、高校入学とともに一人暮らしをしていたのだが、

俺は今はフリーターをしている。



 名前は佐野陽一。今は20歳だ。



 3年前に体育系の部活で言い争いが原因で、

高校中退して今の生活をしている。




――あの時はそうだな、1年に入学してきた後輩の不真面目さに注意した逆恨みで、

ありとあらゆる妨害にあいそのまま中退したのだ。




 趣味はネットゲームと据え置きゲームの最新ゲームを買うことで、

なんとなく生きている。




人当たりの良さが講じて従業員同士の関係は良好。



 オーナーにいいように使われているからか、いろいろ任される。



そのうち正社員になってくれないかと言われたこともある。




 フランチャイズチェーン支部で行われる3か月に一回の新商品の試食会や、

時間帯責任者の講習会などにも参加して、

バイトではあるが、代理店長みたいな扱いな位置にいるわけだ。




 一応店内責任者の名前にオーナー夫婦の名前と俺の名前がある。




毎朝くるおっちゃんに店長と勘違いされている。




向こうが勝手に勘違いしてるから敢えてバイトとは言ってないが……………。






 原付バイクで片道30分程度の場所が俺の職場。




夜走るおかげで普段渋滞する道でもそこまで時間はかからない。




 逆に帰宅する時に走ると50分ぐらいかかるが。。。




そんなんでいつも通り原付バイクで通うのだ。





――しかしその時は状況が違っていたとは夢にも思わなかった。。。






 よくある事だが、工事の関係で通勤ルートを変えることが多い。






 そしてどのルートを通るにしろ、

必ずある交差点に必ず通るのだが、

そこの信号は22時以降になると点滅信号になるのだ。




 普段車が来ないからと言って、

点滅の信号を速度を落とし停止せずに行くことが多かった。




 深夜とはいえ普段は黄色点滅の交差点から


右折することが多いので気にならなかったが、


 たまたまその日は夜間工事で通行止めになっていたので別ルートを通るのだ。





――運命の歯車はその”たまたま”で変わるのだ。





俺は赤点滅の方から出てくるのだ。




 いつものように走ってると、

右から時速100km前後で走って来る車が居るのだ。


しかし、

その時はそんな速度で走って来る車には一切気が付かなかった。




 そしてどうなったかというと、

横から車がぶつかってきて吹っ飛ばされたのだ。





………ああ、この交差点は確か川があったなぁ。






吹き飛ばされて10メートル下のコンクリートが迫ってくる。























そこで意識が無くなる。
































――あれ?

この空間どこかで見たことがある……………。










 真っ暗な空間で立っていた・・・。









 あれ、デジャブなのかな・・・これ。







 つい1時間前に起きた時こんな夢を見た気がする。。。。














 おや、一人誰かがいるので声をかけてみよう。



「あの・・・ここはどこですか?」


『不幸にも命を落とした方よ、あなたは亡くなりました。』



見た目は少年なのか少女なのか、どっちとでも取れる容姿を持っている。




どうやら俺は死んだらしい。


最後の記憶をたどると、

10メートル下にあるはずのコンクリートだもんな。


生きてるわけないか。




記憶が無いところを見ると即死だろうな。




今後の事を聞いてみることにした。


「俺はこれからどうなるんでしょうか?」


――そう尋ねてみる。




 天国と地獄とか死者世界とか、

そんなところに案内されるのかな……………。






 某アニメみたいに長い道から落ちたら地獄とか、

エンマ大王から仕事をもらって生き返るとか、

そんなとこなのかな。






 『あなたは不思議な運命を持っているようですね。いくつか選択があります』


――不思議な運命とはまたどういうことなんだろう。





 「その選択とは?」


その答えを待っていると、何やら複雑そうな顔をして答えてくれる。



 『通常は輪廻にたどって転生して、

もう一度人生をやり直すのが理に外れない方法でしょう。

しかしあなたは何度もそれを行っています。』



 どうゆうことだ…………?


 『あなたは何度もその輪廻をたどって転生しているため、

魂も削れてきています。恐らく次が最後の転生となるでしょう。』



 何度も転生してたのか俺は………。



 『ですが、僕から提案があります。』


 この人声優さんみたいな可愛い声してるな。。。


見た目は少年だけど、少女にも見えてくる。



 「どのような提案でしょうか?」


何だろう、このやり取り以前にもどこかで。


『あなたの生まれた事がある世界以外の世界で転生してみませんか?


一応希望があれば、行ってみたいと思う世界に近いところに案内します』


 お決まりのラノベにありそうな展開やな・・・。


希望が叶うようなので異世界でのんびり過ごすのも悪くない。


 ある程度希望を伝えるとそのようにしてくれるらしい。


更に力をくれるとの事だった。



「じゃあ、お願いします」


丁寧にお願いしておいた。



『今回は潜在能力と記憶も残るようにしておきます。

それから異世界言語、空間収納を使えるようにしておきます。』


――おお、これは良いサービスだ。





『何度も言いますが、次はもうないです。

この次は良き人生であることを願っています』






――そう言い終わると光に包まれ目の前から視界が消える。

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