迷宮攻略の裏側で(side元主神)③
しかし、心配もある。
第十階層に設置したリバイアサンが何故、迷宮の外に……。
槍に刺し貫かれ穴だらけとなったリバイアサンに視線を向ける。
リバイアサンは、愛馬スレイプニルと王座フリズスキャールヴが盗られぬ様にと、このワシが設置したボスモンスター。
大きなシャボン玉状のボス部屋の外に出現する様設置したリバイアサンは、ボス部屋ごと侵入者を破壊する。
第十階層に入れば、即ゲームオーバー。
絶対的な守護者だった筈……。
そんな事を考えていると、またもや地面が黒く染まった。すると、黒く染まった大地から百を超えるコロッサスが出現する。
「な、何っ!? 何故、こいつまでこんな所にっ!」
コロッサス。
それはこのワシが設置した全長五十メートルを超えるマリエハムン迷宮第二十階層のボスモンスター。
しかし、今はその姿を小さくし分裂している。
「ど、どこの馬鹿がこんな事をっ! コロッサスの倒し方も知らんのかっ!」
コロッサスは核を一撃で破壊しないと倒す事はできない。中途半端な攻撃をすれば分裂を繰り返し、収拾が付かなくなる。
大凡、マリエハムン迷宮に潜っている何者かが、コロッサスをこんなにも分裂させ、収拾付かなくさせた挙句、困って迷宮の外にコロッサスを転移させたのだろう。
ボスモンスターを迷宮の外に出すなぞ、なんてはた迷惑な事をしてくれたんだっ!
しかし、実際にコロッサスは迷宮の外に出てきてしまっている……。
正直、迷宮を攻略中の者の方が気になるが、信仰心の源泉たる兵士達を放っておく訳にはいかない。
ワシはグングニルを手に持つと、全てのコロッサスに向けて投擲した。
「コロッサスの核を貫け! グングニル!」
投擲したグングニルは、一体一体、コロッサスの核を貫いていく。
「全く……誰がマリエハムン迷宮を攻略しているのだっ! このワシが設置したリバイアサンにコロッサスを迷宮の外に出すなんて、何を考えている!」
許さん。許さんぞ!
ワシにこれだけ手間をかけさせ、挙句の果てには、ワシの宝を奪い取るなぞ、あってはならん事だ。
しかし、コロッサスを倒さない事には、この場から動く事も敵わない。
くっ、王座フリズスキャールヴがあれば、この程度のモンスターなんて一撃で倒す事ができるのに……。
ワシは渋面を浮かべると、グングニルによるコロッサスの掃討が終わるのをじっと待つ。
そうしている間にも、次々とモンスターが湧いてくる。
この迷宮を攻略している者は、本当に手当たり次第、モンスターを迷宮の外に転移させている様だ。
何とはた迷惑なっ!?
ワシは次々、湧き出るモンスターをグングニルと、ルーン文字を用いた魔術の力で倒していく。
それにしても心配だ。
まさかボスモンスターがこんな方法で攻略されると思わず、迷宮内のモンスターは最低限しか置いていない。
もし万が一、第三十階層に設置した愛馬スレイプニルを攻略されてしまえば、ワシは愛馬を失うだけではなく、王座フリズスキャールヴまで失う事になってしまう。
「許さん……それだけは許さんぞっ!」
ワシがそう呟くと、またもや地面が黒く染まった。
すると、ワシの愛馬スレイプニルが出現する。
「おお、我が愛馬スレイプニルよ! 無事であったかっ!」
しかし、スレイプニルは突然迷宮の外に放り出された為か、随分と興奮している様だ。
このワシの問いかけにも応えず、何故か、オーランド王国の王城へと向かっていく。
「ち、ちょっと、待つのだっ! どこにいくスレイプニル!」
ワシがそう叫ぶと、スレイプニルがこちらに視線を向けた。
「おお、スレイプニルよ……迷宮から出てきたのだな!」
我が愛馬スレイプニルが、こちらに視線を向け足を止めると、突然、空間が歪んだ。
「ああっ?」
ワシがそう呟くと、我が愛馬スレイプニルが、何かに握り潰されたかの様に変形していく。
「なぁっ!? 何が起こったのだっ!?」
心配そうな表情を浮かべていると、突如として握り潰されたスレイプニルが地面に落下していくのが見える。
「ス、スレイプニルゥゥゥゥ!」
ワシが絶叫を上げるも、スレイプニルは動かない。
ま、まるで、死んでしまったかの様ではないか……。
「お、おい。嘘だろ、スレイプニル……これからじゃないか……これからロキを抹殺しようというのに、お前がそんなでは、このワシが成すべき事も成せぬではないか……」
しかし、スレイプニルは動かない。
「お、おのれ……おのれぇぇぇぇ! この私の愛馬をよくも……よくも……」
絶対に許さん。
スレイプニルを迷宮の外に送ったという事は、迷宮を攻略している者が迷宮の中にいる証。
必ずや、愛馬スレイプニルの仇を打って見せる。
ワシはスレイプニルの亡骸にそっと手を当てると、その亡骸にルーン文字を描き炎で燃やし尽くした。
おのれ、おのれ、おのれ、おのれっ!
このワシに愛馬スレイプニルの処理をさせるなぞ、とんでもない事をっ!
絶対に、絶対にお前の事をぶち殺してやる!
ワシはそう思うと、マリエハムン迷宮に視線を向けると、憎悪の視線を宿したまま、マリエハムン迷宮に足を踏み入れた。
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