(短編SS)ロキの悪戯
特典SSとして、担当者様に提案頂いたストーリーの内の一つです。
担当者様からの許可もおりましたので、日頃の感謝を込め、公開したいと思います。
これは第一章の『第37話 迷宮から帰った後で』で、髪の色を変えた後のお話……。書籍化に伴い、カマエルの口調は、丁寧な感じになっておりますw
「悠斗様~♪ 折角だし、一度だけ髪型以外も変身者で変えてみない?」
「えっ? 髪型以外も?」
「うん。そうだよ〜♪ ボクのスキル変身者さえあれば、姿形だけじゃなく体格まで変え放題! 使い方次第で身長を伸ばすことだってできるんだよ〜♪」
「し、身長を伸ばすことができるの?」
ロキさんの言葉に、思わずゴクリと音を立て唾を飲み込む。
「そうだよ~♪ 興味を持ってくれたみたいだね!」
「ちなみに変身者を使えば、カマエルさんのような身長になることもできるのかな?」
チラリとカマエルさんに視線を向ける。
「あれあれ~? 悠斗様は身長にコンプレックスを持っているのかな?」
うぐっ!
俺の心にロキさんの一言が突き刺さる。
「こらこら、ロキ。そんなことを言うものではありませんよ。悠斗様は成長期なのです。これから身長も伸びてきますよ。もしかしたら、私を追い抜く程の成長を見せるかもしれません」
カマエルさんがロキさんを嗜めながら、そう呟く。
しかし、身長の低さにコンプレックスを持っている者の気持ちは、同じコンプレックスを持つ者にしかわからない。
カマエルさんは高身長。
俺が欲してやまないものを持っている。
できることならカマエルさんの身長を二十センチほど分けてほしい。
「いやだなぁ~♪ 冗談だよ。それで悠斗様? 変身者を使ってみる?」
「す、少しだけ興味があるかな? 少し、ほんの少しだけだけどね……」
俺はロキさんから顔をプイッと顔を逸らしながらそう言った。
するとロキさんとカマエルさんがクスリと笑う。
「そうですね。悠斗様の言う通り、ロキのスキル変身者で姿や身長を変えることに興味が湧いてきました。悠斗様も一緒にいかがですか?」
「えっ!? いいの?」
俺が笑顔を浮かべると、ロキさんもカマエルさんを見ながら意味深な笑みを浮かべた。
「もちろんだよ~♪ それじゃあまずはカマエルから変身してみようか!」
すると今度はカマエルさんは慌てた表情を浮かべた。
「ま、待ちなさいロキ。一体私を何に変身させる気で……」
「それじゃあ、いくね! 女の子にな~あれ♪ 『変身者』」
カマエルさんの話を一切聞かず、『変身者』を発動させる。
するとそこには、切れ目が特徴的な女性が佇んでいた。
身長の高さも相まって、まるで男装した劇団女優のようにも見える。
「あはははっ♪ カマエル、すっごくよく似合ってるよ!」
「ロ、ロキ~!」
「まあまあ、それじゃあ次は悠斗様いって見ようか♪」
えっ!?
ま、まさかっ!
「ち、ちょっと待って……」
「悠斗様も女の子にな~あれ♪ 『変身者』」
すると、ロキさんはカマエルさんにやったのと全く同じように『変身者』をかけてくる。
スカート姿の女の子になった俺は、少しだけ涙ぐむ。
「うう……酷いよロキさん。足がスースーする」
カマエルさんは執事服のまま姿を変えたのに、俺の場合、着ていた服ごと変えさせられてしまった。
「あはははっ♪ 悠斗様、スカート姿がすっごくよく似合っているよ!」
「ふふっ、確かに。悠斗様、よくお似合いです」
カ、カマエルさんまで……。
「もう。嬉しくないよ! 身長を伸ばしてよ!」
「あはははっ♪ そうだったね。はい『変身者』」
すると今度はちゃんと身長を伸ばしてくれたようだ。
身長が伸びたためか、風景の見え方が少し違う。
でも……。
「なんで女の子の姿のままなのさっ!」
「いいじゃん。いいじゃん♪ 悠斗様、一生女の子のままでいたら?」
「いいから戻してよ!」
「しょうがないな~♪ 元に戻れ『変身者』」
するとようやく、元の姿に戻してくれた。
「それで悠斗様♪ 身長の高い女の子になった気分はどうだった?」
「そんな事頼んでないよ!」
『私の宿屋』に俺の言葉が木霊した。
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