ロキ召喚
「安心して下さい。そもそも人形は疲れを知りませんし、新たに魔石を自動的に補う機能を取り付けました。今の人形達には、比較的自由度の高い裁量権を与えております。
それに丁度、先日捕えた盗賊を素体とした人形がございます。この人形にドレーク人形と同じメイクを施し、領主様に渡しましょう」
すると鎮守神の後ろから、メイクをしていないドレーク人形モドキが出てくる。
す、凄くドレーク人形に似ている……。
もしかして、人形になる前は兄弟だったとかそんな感じなのだろうか?
「そ、そっか……。それじゃあ、メイクを施したその人形を領主様の娘さんに渡す事にしよう。それともう一つ、鎮守神に相談に乗って欲しい事があるんだけど……」
「相談ですか。一体何でしょう?」
「実は、現国王が最後の悪あがきをしているみたいで、王都行きのフェリー運航が停止されてしまったみたいなんだ。もし領主会議が行われない様なら、接収された土地も返ってこないし、折角、交渉で手に入れたヴォーアル迷宮の攻略許可も無くなっちゃう。鎮守神はどうしたらいいと思う?」
すると、鎮守神は「ふむっ」と呟くと、顎に手を当て少し考え込む。
「そういえば、ロキ様はまだお戻りになられていないのですよね?」
ロキさん?
まあ、天界での謹慎期間を一ヶ月の再延長をしたからね。
「うん。そうだね?」
「では……。ロキ様の謹慎を解き、ロキ様経由で教会に〔瞬間移動〕を付与した魔石を与えてはいかがでしょうか? 現教皇はロキ様の熱狂的な信者と聞きますし、ロキ様自身も謹慎が解けるなら喜んで協力してくれるのではないでしょうか?」
なるほど……。言われてみれば、ロキさんに謹慎を言い渡してから結構経つし、そろそろ謹慎を解いてあげてもいいかもしれない。
それに教会経由であれば問題なさそう……か?
「そっか、ありがと! 鎮守神! ロキさんの謹慎を解いてみるよ」
俺は早速、〔召喚〕でバインダーを手にすると、〔
するとそこには、涙を浮かべ座っているロキさんの姿があった。
「悠斗様?」
ロキさんは俺の姿を見るや否や、両手を広げ俺に突っ込んでくる。
「悠斗様~。もういいでしょ! 教会を手中に収めた事で、天界の神々はボクに何もいえなくなったし、ボクに陰口を言う神々も少なくなってきたけど、ボクにはボクだけの空間が必要だと思うんだよ~。お願いだから謹慎解いてよ~‼」
ロキさんが語尾に♪も付けず話してる。
っていうか、教会を手中に収めた事で、天界の神々はロキさんに何も言えなくなったって……。
その話を聞いた時点で、面倒事が起こる予感がしてならない。
「わかった。わかったから。ロキさんの謹慎は今を以って解くから落ち着いて、今からロキさん専用の階層に出入りしてもいいよ」
「ほ、本当に?」
ロキさんは涙を浮かべながらそう呟く。
あのロキさんが泣く何て一体、天界とはどんな所なんだろうか……。
「ただ、少しお願いがあるんだ」
俺は収納指輪から〔瞬間移動〕を付与した魔石を取り出すと、ロキさんに差し出す。
「〔瞬間移動〕を付与した魔石……。これを教皇ソテルさんに授けるって体で、ロキさんから神託を降してくれないかな? できれば、フェロー王国にある教会にこの魔石を配って、フェロー王国の領主様達にこれを使わせる様に話を持っていって欲しいんだけど……」
ロキさんは俺からその魔石を受け取ると、笑顔を浮かべた。
「全然、全然、大丈夫だよ♪ そんな事で誰にも干渉されないボクだけのスペースが確保できるのならなんだってやっちゃうよ☆」
「そ、そっか。ありがと! ロキさん!」
「もう! 悠斗様もこういう事は早く言って欲しかったな~♪ 急に謹慎期間が延長されたからボク何かしたかと思ったよ。でも悠斗様も怒っている様子もないし、ソテルへの神託位簡単にやっちゃうんだから♪ 〔神託〕」
するとロキさんは何か不思議な窓の様な物を浮かべ、それに向かって話し始めた。
「ソテル~♪ 聞こえる?」
『そ、その声は、ロプト神様ッ! ああ、ああっ! 聞こえます! 聞こえますともっ!』
「お~♪ 感度は良好の様だね。今から君にボクからの神託を伝えるね」
『し、神託ですかッ! ロプト神様の神託ッ! はい。心して聞かせて頂きます!』
何だか以前より、神託がスムーズに行えている様に思える。
多分、ソテルさんがロキさんの力により不朽体化したからだろう。
「今から〔瞬間移動〕を付与した魔石を送るね。それさえあれば、いつでも何処でも好きな場所に移動する事ができるよ。ボクの為にもそれを用いて、ボクの信徒を増やす為の活動に使って欲しい」
『ああ、ああっ! ありがとうございます。ありがとうございますっ!』
「でもね? 少しお願いがあるんだ」
『お、お願いですか? ロプト神様が私に? なんでしょう、一体何でしょう⁉︎』
「これから送る〔瞬間移動〕を付与した魔石、まずはフェロー王国の領主達の為に使って欲しいんだ」
『り、領主達の為に……ですか?』
「うん。そうだよ~♪ なんでも今、フェロー王国は馬鹿な国王様の為に、大変な事になっているみたいなんだ。ボクはそれを止めて上げようと思ってね。ソテルはボクに協力してくれるよね?」
『ええ、ええっ! 勿論です。勿論でございます。ロプト神様! 私は貴方様に全てを捧げた身。当然の事でございます!』
「そっか、ありがと♪ 今から〔瞬間移動〕を付与した魔石を送るから、ちゃーんとフェロー王国の領主達にそれを渡すようにね♪ 期待してるよ。ソテル♪」
『わ、わかりました! ロプト神様! 私への神託。ありがとうございました。ありがとうございました!』
それだけ言うと、ロキは〔神託〕スキルを閉じた。
「さあ、これでいいかな? 悠斗様、ソテルに送る〔瞬間移動〕を付与した魔石の準備はできてる?」
「できてるよ」
俺は〔瞬間移動〕を付与した魔石を収納指輪から取り出すと、ロキさんに渡していく。
それを受け取ったロキさんは、〔神託〕スキルを発動させると、出現した窓の向こう側に〔瞬間移動〕を付与した魔石を突っ込んでいく。
「さあ、これで問題ないはずだよ? 後は静観しているだけで何とかなるかもね♪ それじゃあ、ボクはボクの階層に籠ってるね!」
ロキさんはそう呟くと、自分に充てられた階層へと帰っていった。
どれだけ天界というのは居心地が悪いのだろうか?
俺には想像もつかない。
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