ヨルズルの依頼①
〔トゥルクのカジノ〕を後にすると、満面の笑みを浮かべた王都ユートピア商会の従業員達が声をかけてくる。
「いや~追い出されてしまいましたね。ところで悠斗様はカジノでどの位稼いだんですか?」
「確か白金貨100万枚(約1,000億円)位かな?」
カジノでこれ程稼ぐ事ができるとは思わなかった。
こんなに簡単にお金を稼いでは駄目になりそうだ。
悪銭身に付かずという言葉もあるし、カジノで稼いだお金は教会やスラムの人々への寄付に使う事にしよう。
「オスロさんはカジノでどの位稼いだの?」
俺が興味本位で聞いて見ると、ユートピア商会の従業員オスロさんが意気揚々と答える。
「スロットでは全然駄目でしたが、ブラックジャックで白金貨10枚(約100万円)も稼いでしまいました! いや、鑑定スキルが禁止されていないカジノはとても楽しかったですね!」
「悠斗様、見て下さい! 私もこんなに稼ぎました!」
「俺もです!」
皆、鑑定スキルを使ってカジノで儲けた様だ。
「いや、しかしディーラーが途中からイカサマを使いだした時には焦りましたよ」
「私もです。折角のブラックジャックを何度も潰されてしまいました」
えっ?
カジノのディーラー、イカサマしてたの?
俺にはそんな素振り見せなかったのに……。
まあいいか……。
みんなカジノで楽しく遊べた様だ。本当によかった。
それにトゥルクさんのお蔭でユートピア商会土地接収の黒幕の情報を手に入れる事ができた。
まさか万能薬が原因だとは思わなかったけど……、早速、屋敷神達と情報共有しなければ……。
「そういえば悠斗様聞きましたか?」
「ん? なんの事?」
「私達が捕らえた冒険者と盗賊団についてですよ。なんでも、冒険者ギルドのギルドマスターが冒険者を借金奴隷、盗賊団を犯罪奴隷として引き取ったらしいですよ? 冒険者ギルドのギルドマスターって凄いんですね〜。あの人数を買い取る事ができるなんて……」
へえ、それは初耳だ。
従業員達が捕らえた冒険者に盗賊団は少なく見積もっても200人を超える。
一人当たり白金貨1枚だとしても、白金貨200枚は硬い。よくそんなお金があったものだ。
「へえ、そうなんだ」
そんなに多くの借金奴隷と犯罪奴隷を引き取ってどうするつもりなんだろう?
迷宮攻略でもするのかな?
まあ買い取ってくれるならありがたい。
なにせ買取額はそのまま従業員のボーナスになるのだから。
そんな事を話しながら〔私の宿屋〕に入っていくと受付のお姉さんに呼び止められる。
「お帰りなさいませ。悠斗様、冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズル様よりご伝言をお預かりしております。少々、お時間を頂戴してもよろしいでしょうか?」
なんだろう。報酬の件かな?
「はい。問題ありません」
俺は王都ユートピア商会の従業員達と別れると、冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズルの伝言を聞く事にした。
「ヨルズル様より、捕らえた盗賊団や冒険者の件について話があるとの事です。時間に空きがある時に冒険者ギルドにお越し下さい」
従業員達が捕らえた盗賊団に冒険者か……。
〔私の宿屋〕備え付けの時計に視線を向けると、今の時間は午後3時。
「わかりました。今から冒険者ギルドに向かいたいと思います。伝言ありがとうございます」
俺は受付のお姉さんにお礼を言うと、冒険者ギルドに向かう事にした。
冒険者ギルドに着くと、すぐにギルドマスター室に通される。
「やあ。忙しい所、呼び出しに応じてくれて申し訳ないね。まあ適当にかけてほしい」
「ありがとうございます。こちらも時間が空いていたので丁度良かったです。それで話とは一体何でしょうか?」
俺はソファーに座ると、冒険者ギルドのギルドマスター、ヨルズルに視線を向ける。
「いやなに。君に渡したい物とお願いがあってね」
そう呟くと、ヨルズルは白金貨200枚(約2,000万円)入った袋を取り出しテーブルに置く。
「これは私が買い取った奴隷達の代金だ。彼等を捕まえたのは君たちだからね。受け取って欲しい」
「ありがとうございます」
俺をここに呼んだのは報酬を渡す為だった様だ。
有り難く報酬を受け取ると収納指輪に収納し、お礼の言葉を呟く。
「それでお願いというのは何でしょうか?」
「……実はね。Sランク冒険者である君にしか頼む事のできない依頼があるんだ」
「Sランク冒険者にしか頼む事のできない依頼ですか……」
正直気が乗らない。それに今はバカンス中……。あまり仕事に縛られたくない。
俺が断ろうとすると、それを察したヨルズルが土下座をし出す。
「この領にはSランク冒険者が君しかいないんですよ。人の命もかかっていますし、大変申し訳ないのですが検討して頂けると助かるのですが……」
人の命がかかっているなら仕方がない……か?
俺にもできる事とできない事がある。取り敢えず、依頼内容だけでも聞いて見よう。
「顔を上げて下さいヨルズルさん。依頼内容を聞いてからでよろしければ検討致します。それでよろしいですか?」
「は、はい! もちろんです!」
ヨルズルはホッとした表情を浮かべると、依頼内容について話始めた。
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