全従業員戦う店員さん化計画(パート2)

 翌朝、昨日採用した従業員達と共に食事を摂ると、早速、従業員の教育研修を行う事にした。


「さて、皆さんにはこれから迷宮内でモンスターを倒して貰おうと思います」


 従業員の研修第一弾は従業員達のレベリングから始まる。

 とはいえ、全従業員を引き連れ迷宮でレベリングをするのは非常に効率が悪い。


 その為、昨日採用した従業員の凡そ一割に当たる20人を引き連れエストゥロイ領が管理しているケァルソイ迷宮に向かう事にした。


 俺はケァルソイ迷宮に入ると〔影探知〕で人やモンスターのいない場所に移動すると、従業員全員に魔法、物理攻撃を無効化する〔影纏〕を掛けていく。


「さて皆さん。今回は全員のレベルアップを目的とした研修です。当商会では、皆さんのレベルを強制的に上げる事で、自衛能力を高めて貰います。ケァルソイ迷宮は第6階層目以降から攻略する事が可能となっていますので、まずはそこまで移動したいと思います。ああ、言い忘れました。倒したモンスターは皆さんに渡した収納指輪に収める様にして下さい。本日の研修で倒したモンスターは後程、冒険者ギルドまたは当商会で換金し、皆さんに分配する予定です。ちょっとしたボーナスだと思ってレベル上げに励んで下さい」


 倒したモンスターがそのまま自分達のボーナスになると聞いた従業員達か歓声を上げる。


「おい、ボーナスだってよ!」

「ほ、本当によろしいんですか!」


「はい。これは研修ですから。研修で得た成果は全て皆さんに分配します。では皆さん! 臨時ボーナスをゲットする為、モンスターを狩って狩って狩りまくりましょう!」


「「「おお~っ!」」」


「それではこれからケァルソイ迷宮第12階層へ向かいます。皆さんこの影の中に入って下さい」


 俺は影を広げ〔影転移トランゼッション〕を発動させる。


「これは〔影転移トランゼッション〕。この影に入る事で第12階層迄ショートカットする事ができます。影の中に入るのは怖いかもしれませんが、一人一人慌てず影の中に入って下さい」


 従業員達は恐る恐る影の中に入っていく。

 全員影の中に入った事を確認すると、〔影転移トランゼッション〕で第12階層へと移動した。


 ケアルソイ迷宮第12階層は、草原フィールド。

 〔影探知サーチ〕してみると、前回は確認する事の出来なかったモンスターを捉える事に成功する。

 従業員達は突然景色が変わった事に驚き、キョロキョロと周りを見渡している。


「それでは皆さん。今からモンスターを出現させますので、円陣を組んで剣を構えて下さい」


 俺がそう呟くと、〔影探知〕で捕捉したモンスターを次々と〔影収納〕に沈めると、〔影縛〕で身動きを取れなくした上で従業員達の目の前に吐き出していく。


 ケアルソイ迷宮第12階層に出現するモンスターは全て鳥型のモンスターの様だ。

 従業員達の目の前に突然吐き出された鳥型のモンスター、ロックバードは困惑の表情を浮かべている。


「「「グ、グエッ?」」」

「「「グオッ?」」」


 ロックバードが困惑の表情を浮かべるのも納得の状況だ。


「それでは皆さん! ロックバードは〔影縛〕で動く事ができません。今の内に倒しちゃって下さい! あっ! 焦らなくてもいいですからね! まだまだ沢山のロックバードを捕えてあるので!」


 俺がそう言うと、従業員達が我先にとロックバードに斬りかかる。

 ロックバードも殺される訳にはいかないと、必死の抵抗を試みている様だが〔影縛〕で縛られてはどうしようもない。


「倒せる……。俺達でもモンスターを倒せるぞっ!」

「本当だ! これなら僕にもできるかも……」

「悠斗様! 次のロックバードをお願い致します!」


 従業員達によってサックリ倒され、彼らの経験値になっていく。


「皆さん! 倒したロックバードは収納指輪に入れる様にして下さいね! さあ次の階層に行きましょう!」


「「「おお~っ!」」」


 そこから先は同じことの繰り返し。

 俺が〔影探知〕でモンスターを捕捉して〔影縛〕で動きを封じ〔影収納〕に収めては従業員達の目の前に出していく。従業員達は〔影収納〕から吐き出されたモンスターを倒す事によって順調にレベルを上げていった。


 そしてそれを第30階層迄繰り返し行う頃には、従業員達のレベルも平均40程迄上昇。

 ケアルソイ迷宮は、王都ストレイモイにあるヴォーアル迷宮よりもモンスターのレベルが高い様だ。


 思った以上の成果に思わず俺もニヤケ顔になってしまう。

 あと二、三回これを繰り返せば、とんでもないレベルの従業員達に育てる事ができる。


「よし! そろそろ迷宮を折り返しましょう! 帰りも同じように皆さんの目の前にモンスターを出していくのでそのつもりでお願いします!」


「「「はいっ!」」」


 実にいい返事だ。

 第30階層のボスモンスター、フェニックスを斬り倒すと、従業員達と共に今度は迷宮を折り返していく。


 そしてケアルソイ迷宮第5階層に到着する頃には、従業員達のレベルも60程度まで上昇していた。


「皆さんお疲れ様です! 今日の実技研修はこれで終了と致します! モンスターは冒険者ギルドに買い取って貰い、報酬は改めて配布する予定です。これだけモンスターを倒せば冒険者のランクも上がると思いますので、冒険者登録をしている方やこれから冒険者登録を考えている方は俺に着いて来て下さい」


「「「はい!」」」


 ケアルソイ迷宮を第30階層まで攻略した俺達は冒険者ギルドに向かう事にした。

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