ケァルソイ迷宮④
オストリッチの大群が柄の悪い冒険者達を追いかけまわしているのを遠くから確認すると、俺達はケァルソイ迷宮の第12階層に向かう事にした。
「悠斗様。折角捕らえたオストリッチと卵、あんな奴らに渡してしまってよかったんですか?」
今もオストリッチの大群に追いかけられている柄の悪い冒険者をチラリと見る。
「エストゥロイ領には観光に来ているんだし、いいのいいの。それより次の階層に早く行こう」
「そ、そうですね」
折角捕らえたオストリッチと卵を渡すのは嫌だったけど仕方がない。
面倒事は御免である。
「それにまだまだ捕らえたオストリッチと卵はいっぱいあるしね」
そう。俺達に絡んできた柄の悪い冒険者達に渡したのは一部のオストリッチと卵だけ。
他のオストリッチと卵はちゃんと〔影収納〕に収めてある。
「そ、そうですか……。で、では気を取り直して第12階層に向かいましょう」
俺達は柄の悪い冒険者達の悲鳴が木霊する第11階層を後にし、第12階層に続く階段を下りて行った。
ケァルソイ迷宮の第12階層も、第11階層と同じく見渡す限りの草原が広がっている。
第11階層と違う点は、草原に卵が配置されていない点だけだ。
「見た所、見える範囲にモンスターはいない様ですね……」
俺が〔
この階層にはいったいどんなモンスターがいるんだろう?
ラオスさん達と共に第12階層を歩いていると、第13階層に繋がる階段の前にモンスターが積み上がっているのが見える。なぜモンスターが出てこないのだろうと不思議に思っていたけど、先客がいた様だ。
俺達は積み上がったモンスターを一瞥すると、第13階層に繋がる階段へと向かう。
すると、俺達に向かって炎の塊の様なものが飛来してきた。
従業員の一人が水属性魔法で火の塊を打ち消すと、臨戦態勢に入る。
「おいおいおいおい、第11階層の奴らは何をしていたんだ?」
11階層にいた柄の悪い冒険者をさらに悪くしたパンクなファッションセンスのモヒカン男達が俺達を睨みつけてくる。
「悠斗様……」
俺だと相手に侮られるだけで交渉事には全く向かない。
俺はコクリと頷くと、ラオスさんの後ろに下がり〔
みるみると身体が黒く染まっていく光景に、モヒカン男達も唖然として様子だ。
「な、なんだテメーらは……。おい! 第11階層にいた俺達の仲間はどうした!?」
どうやらこのモヒカン男達は、第11階層にいた柄の悪い冒険者のお仲間らしい。
良くも悪くも、柄が悪い冒険者という一点で一致している。
「さあな。いまごろオストリッチの大群に追い回されているんじゃないか?」
「はっ! あいつ等がそんなヘマする訳ねーだろ! さてはテメェら逃げてきたな?」
「だったらどうだというんだ?」
モヒカン男達がニヤニヤ笑いながら俺達を取り囲んでいく。
「決まってんだろ……。俺達の行動を冒険者ギルドに報告される訳にはいかないんでな、消させてもらうぜッ!」
そう呟くと、モヒカン男達が俺達に繰りかかってきた。
俺はモヒカン男達に影を伸ばし〔影縛〕で縛り上げると、足をすくい地面に転がしていく。
「ぐぁっ! な、なんだっ?」
「動けねぇ! お、俺達に何をしたっ!」
「何って、影で縛って足をすくっただけですけど?」
俺がそう呟くと、モヒカン男達が驚愕の視線を向けてくる。
「お、お前みたいな餓鬼が……」
「い、意味が分からん。影で縛って? 何を言っているんだ……」
モヒカン男達が〔影縛〕から逃れようとジタバタしながら何か呟いている。
しかし、そんな事はどうでもいい。
俺は収納指輪から紐を取り出すと、ラオスさん達と共にモヒカン男達を縛り上げていく。
「この人達は冒険者なんだよね? 迷宮の中で冒険者を襲う事ってよくある事なの?」
俺がふとした疑問を呟くと、ラオスさんが首を振る。
「こんな事がよくあっては困ります。彼等は冒険者を襲い金品……いえモンスターの素材を強奪しようとしたのです。これは明らかに犯罪です。彼等を捕まえて行きましょう」
「じゃあ、第11階層にいた柄の悪い冒険者達も捕まえておけば良かったね」
なんだか柄の悪い冒険者達とお仲間みたいだし、こんな事になるなら捕らえておけば良かった。
俺はモヒカン男達に視線を向けると、モヒカン男達が倒したであろうモンスターごと〔
「じゃあ、〔
「はい。お願いします」
俺が影を地面には這わせると、モヒカン男達が悲鳴を上げながら〔
周りは真っ暗だし、紐で縛られて動けないだろうけど酸素があるだけマシだと思ってほしい。
「悠斗様。彼等を冒険者ギルドに引き渡さなければなりませんし、十分に収穫がありました。今日の迷宮攻略はここまでにしませんか?」
「そうだね。今日はここまでにして帰ろうか」
モヒカン男達を〔
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