まつり
うちのまつりを一緒にやろうと
雪がたんと降ったなら、まつりをせねばなるまいが
おまえの村は
熊のように
どうしたものかと
ほかの部族のまつりには
たとえば人の
あるいは人を生きたまま、地の底深く埋めるとか
そんなまつりであったなら、とても一緒は出来ないと村長は思った
非道なまつりを一緒にやって、どうせ人が死ぬのなら
戦をしたって同じだと大声で言った
もともと戦が嫌だから、こんな所に引っ越したのだ
戦は人が死ぬだけで何のあたいもありゃしない
だいいちまつりのやりかたが、どんなものかも判らない
まずは誰かがこっそりと、
どんなまつりだと
ちいさな声できいてみた
火を
酋長はこたえた
空が紅く染まるほど大きな炎を上げるのだ
槍や弓矢は使うまいのと
もちろん使うぞと酋長はこたえた
村人すべて入るほど大きな穴も掘るのだと
熊のような酋長が熊のような大きな声で言ったから
使者は恐くなって、あとは何もきかなかった
戦をせねばなるまいか
村長は呟いた
戦をするよりしかたない
若い衆は
長老はもう一度首を傾げた
まんいち非道なまつりでも、きっと話せばわかるだろう
若い
もしもまつりの最中に非道な
俺らは死ぬまで戦うぞ
若い衆は言い合った
とんとん雪が降っている
もと居た
誰かが言った
雪がたんと降ったので、酋長はやってきた
背には山ほど
一族郎党引き連れて、雪を押し分けやってきた
みんな強そうだったので、戦になったらどうしようと
若い衆はふるえた
槍は小屋にかくしたが、相手が弓を使ったら、取りに行く間もないだろう
まつりの準備がはじまった
酋長が雪を堀り始めた
一族が雪を堀り始めた
何を埋める穴なのか
村長はきいてみた
なかで皆がうたうのだ
中で皆が踊るのだ
うたって踊るだけなのか
村長はきいた
ほかに何かするのかと酋長は首を傾げた
酋長が弓矢をとりだした
若い衆は
弓の
こうやって火をつくるのだ
酋長は矢先に
雪を積んで水の神を祭るのだ
火を焚いて火の神を祭るのだ
うたって踊るだけならば、わしらと同じまつりじゃないか
村の誰かがささやいた
誰も殺さぬまつりらしい
ほかの誰かもささやいた
こんこん雪が降ってきた
雪がこんなに降るのなら、
村の一人が笑った
雪がこんなに積もったら人を埋めるも一苦労
村のみんなが笑いはじめた
ようやく祭りが始まった
酋長が火の神をうたった
村長が水の神をうたった
みな踊り始めた
若い衆が槍の束をもって来て火の中にほうりこんだ
よく燃える薪だと酋長は笑った
まつりのために作った薪だからだ
若い衆も笑った
火の粉と雪が交じりあい、邑は昼のように明るくなった
むかしむかしの大昔
こんな話、あったような気がする
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