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悩む私に火の神様は顎で“座れ”と指示をする。私はおずおずと火の神様の横に腰を下ろした。


「昔ひどい山火事があったのだ。そのときに俺は助けに来るのが遅れた。俺は火の神だ。火を操ることができる。咲耶姫は山の神だ。木々やそこに住まう動物たちを救おうと尽力していた。だから俺がもっと早く気付いてここに着いていれば、咲耶姫も火傷を負わずに済んだろうに。まさかそのことをずっと怒っているのか?」


火の神様は顎に手を当てて考え込む。

私はガックリと項垂れた。

何かこう、モヤモヤしてウズウズする。


「だあああっ!ええ、ほんとに、何千年も何やってるんですか。こじれすぎです。完全にすれ違いです!早くご結婚なさってください。」


私の叫びに、火の神様の眉間にシワが寄る。


「結婚?だが咲耶姫が嫌がって…。」


「ああ、じれったい!見舞いだなんてごまかさずに、好きだから会いに来たと言ったらどうなんですか。咲耶姫様、気付いてませんよ?」


「何がだ?」


私は火の神様の手に携えられている一輪のキキョウを指差した。火の神様も視線をキキョウに向ける。


「キキョウの花言葉。永遠の愛、深い愛情、ですよね?」


「ぐっ!なぜそなたが知っておるのだ。」


「この際だから言いますけど、お互い思いやってるわりには言葉が足りないからすれ違ってしまうんですよ。ちゃんと言わなきゃ伝わるものも伝わりませんよ。」


私の言葉に、火の神様の纏うオーラが一段と激しくなった。そして私を睨みつけると怒りの満ちた声で怒鳴った。


「なんだと!」


その勢いに汗が流れ落ちる。

火の神様が怒って興奮しているのだ。

今にも燃え盛らんとする姿に、私はすぐさま謝罪した。


「すみません、でしゃばりました!」


咲耶姫様が気さくなのでついついそのノリで火の神様ともお話をしてしまったが、この方が一体どんな神様なのか知らない。もっと慎重に言葉を選ぶべきだった。しかも咲耶姫様が気持ちを伝える前に説教してしまうなんて。


あああ、何てことだ。

大失態だ。

私は思わず頭を抱えた。

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