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「ええーっと、それは神様の力でなんとかなりません?」


「神をなんだと思っているのだ。なんでも叶えられるわけではない。」


「そうなんですか。」


私は肩を落とした。

神頼みすれば、今ならば叶えてくれるんじゃないかという甘い考えは一蹴される。

人を応援するだけじゃなく、自分も頑張らないとなぁ。


「わかりました。私は彼氏ときちんと話してきちんと別れます。」


「別れるのか?」


「はい、咲耶姫様のお話を聞いていたら、私の恋愛は愛ではないことがわかりましたから。」


高志に対する想い。

好きだと言う気持ち。

積み重ねてきたものは嘘ではない。

だけどそれはきっと、恋する自分に恋していただけなんだと思う。彼氏がいるっていうステータスがほしかっただけのように感じる。

それが今ようやくわかった気がするのだ。


「もっと自分磨きをして、素敵な彼氏を見つけます。って、聞いてます?咲耶姫様?」


見れば咲耶姫様はこたつに突っ伏して目を閉じていた。

寝てしまったのかな。

お酒のせいなのかほんのり顔も赤らんでいる。

思えば私もちょっと飲みすぎた。


こたつの上には食べかけのお菓子とスルメ、そして空になった日本酒の瓶。


ぐいのみグラスを大事そうに持ったままの咲耶姫様の姿に、思わず笑みがこぼれた。

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