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「火の神様、次はいついらっしゃいますかね?」


「毎日のように来ているからな。」


「え、頻度多いですね!」


私のツッコミに、咲耶姫様はふんと鼻をならした。


毎日お花を持ってお見舞いに来る火の神様。あんなぶっきらぼうな態度だったけど、めちゃくちゃ咲耶姫様のことを好きなんじゃないだろうか。

なのに冷たく追い返す咲耶姫様。好きなのに冷たい態度を取るなんて、何だか悲しい。

相思相愛(たぶん)なのに、一体どれだけの間すれ違っているのだろう。もっとお互い素直になれたらきっと上手くいくと思うんだけどな。簡単そうなのに簡単じゃないのだろう。そう年月が物語っている気がする。


「咲耶姫様、さっきのお花、髪に飾りましょう?」


私はキキョウの茎を短く切って、咲耶姫様の耳の横に優しく挿した。

咲耶姫様の綺麗な顔立ちがなおさら引き立つ。


「ほら、素敵!よく似合います。これで、咲耶姫様の気持ちを伝えましょうよ。」


「伝えるって、何を伝えるのだ?」


「火の神様に好きです~って。」


「…なっ!!!」


咲耶姫様は顔を赤くして仰け反った。

恋人同士のはずなのに、こんなにもピュアな咲耶姫様が愛しく感じる。だからこそ余計に、お二人には上手くいってもらいたい気持ちが芽生えた。

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