24

「あいつは、いつもこうして花を持って見舞いだとやってくる。」


咲耶姫様は私からキキョウを受け取ると、ため息混じりにポツリと呟いた。そして無造作にこたつの上に置く。

ふんとそっぽを向く咲耶姫様だが、そこに悪意はまったく感じられない。むしろ好いているような。嬉しいのに素直に嬉しいと表現できない、そんな感じが漂っている。


「…もしかして彼氏さんですか?」


私の問いかけに、咲耶姫様はビクッと肩を震わせ、ほんのり顔が赤くなる。そして困ったように視線が泳いだ。

とんでもない乙女感を出す咲耶姫様が可愛らしく、なぜだかこちらが恥ずかしくなってしまう。

この反応、私の第六感間違っていないかもしれない。


「…じゃあ、好きな人です?」


咲耶姫様の顔がさらに赤くなった。

神様でもそんな反応するんですね。

咲耶姫様の反応がいちいち可愛くて、私は段々とウキウキしてしまう。


「もしかして迫られてる、とか?」


畳み掛けるように問うとギロリと思い切り睨まれ、その凄みにすぐさま私は畳に頭を押し付け謝った。


「すみません、調子に乗りました!」


いや、本当に。

神様相手に調子に乗りすぎだ、私。

これはもう酔ってるってことにしてください。

ここはひとつ無礼講で。

何卒、なにとぞ!


心の中で謝罪するも、咲耶姫様からの応答はなく、私はそろりと顔を上げる。


「ああっもうっ。」


そこには、顔を真っ赤にして両手で頬を包んでいる咲耶姫様がいた。その瞳は若干潤んでいるように感じる。


咲耶姫様、分かりやすいにも程があるし、その反応は可愛すぎます。

と、私は心の中でじたばたする。

調子にのってすみませんと謝ったばかりなのに、私の好奇心はまた調子よくムクムクとわいてきた。


「咲耶姫様の恋愛話も聞きたいなー…なんて。ほら、女子会だし。ささ、飲んで飲んで。」


私は咲耶姫様のぐいのみグラスに日本酒を注いだ。トクトクと良い音がする。

咲耶姫様はおもむろに手に取ると、それをしばらく見つめたあと、一気に煽った。

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