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高志とは付き合ってそろそろ一年くらいになる。楽しかったこともあったはずなのに、山に置き去りにされた記憶が衝撃的すぎて今では何も思い出せない。


「高志とは最近すれ違いばかりなんです。私が働き出したせいもあるのかもしれないけど、生活が合わないというかずれるというか…。今日も久しぶりのデートだったんですけど、無計画に山に連れて来られるし、急カーブを100キロで曲がるし、本当にもう、自分勝手なやつなんです!」


「その高志とやらは、何をしに山へ来たのだ?」


「星空が綺麗に見える穴場スポットだから来たとか言ってましたけど、星空なんか全く見もしないで…車の中で、その、迫ってくるとかありえません!」


あの時のことを思い出すと背筋がぞわっとする。迫られたかと思えばお前はいつも自分勝手だなどと罵られ、消えろと蔑まれた。

ああ、思い出すとムカムカする。


「それは彼氏と呼べるのか?」


咲耶姫様は不思議そうな顔をした。

確かに、そんな酷いやつが彼氏とか、全然人に自慢できないし残念すぎる。


「どうでしょう?もう別れたも同然ですよね。」


「というより別れた方がいいんじゃないか?」


意外とストレートにものを言う咲耶姫様に、私は苦笑いをした。咲耶姫様から見ても高志は酷いやつなんだと思うと、味方ができたみたいで少しほっとする。


「ですよね、サイテーだあんな男。」


言って、私は日本酒をぐいっと飲み干した。

高志との思い出やこれまで交わした会話をいろいろと思い出す。

本当に、楽しかったこともときめいたこともあったはずなのに、あの記憶は一体どこへいってしまったのだろうか。私の中の楽しかったメモリは全消去されてしまったのだろうか?

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