19

「飲むか?」


どこから持ってきたのか、日本酒の一升瓶とおしゃれなぐいのみグラスが差し出された。

ぐいのみグラスは濃い青色がまだらに散りばめられ、まるで夜空のようなデザインだ。


「まさかこれも…。」


「日本酒はお供え物だが、ぐいのみは私物だ。」


咲耶姫様は悪戯っぽく笑う。

やっぱり日本酒はお供え物だったことに、私は苦笑いだ。


「このぐいのみ、とても綺麗ですね。まるで夜空みたい。」


ぐいのみグラスを手に取っていろんな角度から見てみる。びーどろのようなキラキラと星が散りばめられているようなデザインで、展望台から見た星空を思い起こさせた。


「そうだろう。火の神に作ってもらったお気に入りなのだ。」


「火の神様?」


「まあ、飲むがよい。」


咲耶姫様はぐいのみに日本酒を注ぐと、ぐいっと一気にあおった。私も咲耶姫様に倣ってお供え物の日本酒をありがたくいただく。豊潤な香りが鼻から抜けて、後味がとてもすっきりしていて飲みやすい。このお酒をお供えした人に感謝だ。

お酒に詳しくはないけれど飲むことは好きだ。ちびちびとぐいのみを傾けながら、私は高志への怒りや不満を思い出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る